女子旅の目的地としてすっかり定着したチェコの魅力をお届けしているシリーズ3回目は、世界のフーディーが注目するプラハの最先端レストランを紹介します。

新しいのに懐かしい

プラハの観光中心から東方に外れたインダストリアルな地区に去年11月にオープンした〈エスカ〉は、レストラン、コーヒーショップ、ベーカリーが一体となった複合施設です。

〈エスカ〉のエントランス


コーヒーカウンターのスタッフ

この店の食事は、世界のガストロノミー(美食)の最前線と同じ方向を向いています。シェフのマルティン・シュタングルさんはミシュランの星を持つプラハ市内の〈ラ・デグスタシオン〉のスー・シェフだった人。

1階はオープンキッチンの席

ホームメイドのレモネードはチェコの定番ドリンク

肉か魚のメインの脇に野菜の添え物というチェコ伝統の形式はこの店では取っ払われ、旬の野菜が主役を務めます。

シェフが大事にしているのは、「発酵」「乾燥(干す)」「薪による加熱」「直火焼き」といった、田舎の村々で何百年も変わることなく受け継がれてきた伝統手法。

エディブルフラワーの塩漬け

発酵中のサワードウ


針葉樹の葉の仕込み

野花を塩漬けしたり、針葉樹の葉を発酵させたり。食材も地元の野生のものを多用している点は、北欧や中南米などで起こっている食のムーブメントに共通しています。

メニューから例を取ると、「灰のなかのポテト、魚のスモーク、乾燥した卵黄、ケフィア」という料理があります。薪で直火焼きしたポテトと燻製をかけた鯉を発酵乳のポタージュで覆い、その上から干した卵黄を散らして、塩味とコクをプラスしたもの。

干した卵黄がアクセントのポタージュ


燻製したマスとディルマヨネーズを載せたポテトの「鳥の巣」


麻の実をちらしたズッキーニのサラダ


ケフィアの海にセロリとグリーンピースをのせて

「スモークド・ビーフ・タルタル、エシャロット、マスタード、グリルド・ブレッド」には、サワードウから作った窯焼きパンが使われ、香味のあるエディブルフラワーのピクルスが添えられています。

燻製のかかった肉とパンの香ばしさがマッチ

軽く炙ったアスパラ


蒸したマスにカリフラワーとディルをのせて

どの料理も見た目はモダンですが、食べてみると、記憶の奥の方に訴えるような、どこか懐かしい味がします。同行したプラハっ子の女性は、「これは、まさに私たちにとっての“おふくろの味”。懐かしくて涙が出そうです」と言っていました。ただ、彼女のお母さんが実際に作っていた料理とはもちろん別物です。そこがこの店の料理の不思議なところ。

2階のレストラン席。家具は北欧系


スタッフの自然体なサービス

添乗員さん付きのツアーでプラハを訪ねると、ビールと鴨の丸焼きにクネドリーキというパンのようなものを添えたものを「チェコ料理」として食べさせられることが多いようです。もちろん、そういう料理だって、しかるべきところで食べればおいしいのですが、それだけではプラハの本当の魅力に触れたとはいえないでしょう。「田舎の伝統手法で調理する最新の料理」、おすすめです。

取材協力:チェコ政府観光局
写真:Taisuke Yoshida

【店舗情報】
Eska
Pernerova 49, Prague 8
Tel +420 731 140 884
http://eska.ambi.cz/en/

(浮田泰幸)