厳選!2歳馬情報局(2016年版)
第16回:ザウォルドルフ

 夏競馬が終わって、9月10日からはいよいよ秋競馬が開幕した。これからは主要4競馬場(中山→東京、阪神→京都)が舞台となり、2歳馬のデビュー戦でも評判の高い逸材たちが続々と出走してくる。

 9月18日の2歳新馬(阪神・芝1800m)で初陣を飾るザウォルドルフ(牡2歳/父ディープインパクト)も、注目度が高い若駒の1頭だ。

 母は、現役時代にアメリカで活躍したウィーミスフランキー。わずか5戦でキャリアを終えたが、その中にはGI2勝という輝かしい実績がある。まさに素質で圧倒した"天才肌"と言えるだろう。その母の初仔であり、トップ種牡馬のディープインパクトをかけ合わせて生まれたのが、ザウォルドルフだ。

 デビューへ向けて、所属する友道康夫厩舎(栗東トレセン/滋賀県)で調教を積んでいる同馬。現在の状態について、関西競馬専門紙のトラックマンはこう話す。

「8月中旬に入厩して、ここまで順調に調教をこなしています。ただ、スタッフは『まだ芯が入っておらず、ゆるさがある』と慎重なジャッジ。腰がパンとしておらず、『いきなり初戦で白星というよりは、将来性に期待したい』とコメントしていますね」

 陣営のトーンはかなり控えめだ。だが、あまり悲観的に見る必要はないかもしれない。というのも、トラックマンによれば「もともと2歳馬の評価は、相当慎重な厩舎」とのこと。今年のGI日本ダービー(東京・芝2400m)を制したマカヒキも同厩舎だが、デビュー前の評価は「ザウォルドルフと似た雰囲気でした」という。

「厩舎としては、『この状態で勝てれば、大きいところが狙えるし、それを期待する逸材』と話しています」と、トラックマンは話す。さらに、厩舎の期待の大きさについて、こう続けた。

「そもそも陣営は、『ディープインパクトの産駒らしく、背中の乗り味は文句なし。将来性は間違いなくある』と、素質の高さにはかなりの信頼を置いています。そのうえで、『使っていく中でパンとすれば、クラシックも見えてくる』と話しています。初戦で白星を取れないとしても、注目し続けるべき馬でしょう」

 また、今年の3歳クラシックでは、ある"血統パターン"が話題となった。それは、ヘイローを祖父に持つ父ディープインパクトと同じように、母方の祖先にもヘイローがいる馬だ。このように父方と母方で同血が重なることを「クロス」と言うが、今年のダービー馬マカヒキ、2着サトノダイヤモンド、さらにはGIオークス(東京・芝2400m)を制したシンハライトなどが、ヘイローのクロスを持つディープインパクト産駒だった。ザウォルドルフも同様で、その点からも活躍が期待できる。

 厩舎の高い評価とともに、近年の血統トレンドも持ち合わせたザウォルドルフ。これから競走馬として、どんなパフォーマンスを見せるのか。まずは初戦の走りをしっかりとチェックしたい。

河合力●文 text by Kawai Chikara