執筆:山本ともよ(管理栄養士)


疲労は、「痛み」「発熱」と並んで生体の3大アラームと言われ、健康を維持するうえで重要な信号になります。しかし、とくに働き盛りのビジネスパーソンは、その信号を「当たり前」「仕方ない」と軽視しがちです。

そこで今回は、疲労のメカニズムを知り、予防策について考えてみましょう。

疲労とは?

健康な人にとって疲労とは、心身の限界を超えた仕事やできごとに直面したときに、一時的にからだやこころのパフォーマンスが落ちる状態のことをいいます。
疲労の結果、休息を求める欲求が生じたり、不快感を伴うことがあります。

疲労のメカニズム

それでは、心身の限界を超えた仕事やできごとに直面したとき、身体ではどのようなことが起こっているのでしょうか。

心身にストレスがかかると、エネルギーを多量に消費し、エネルギー不足状態になります。そうすると、身体はエネルギーを作り出すように働きます。

エネルギーを作り出す過程で生じるのが「活性酸素」。オーバーワークになると活性酸素の量もグンと増えます。その結果、細胞は活性酸素に傷つけられます。
脳も神経も筋肉も、身体のほとんどは細胞でできていますので、1個1個の細胞が機能低下に陥ると、全体的な働きも鈍くなってしまうのです。

また、細胞が傷つくと、そこから疲労因子FF(ファティーグ ファクター)が発生し、それが蓄積することで疲労を感じることもわかっています。

疲労回復のメカニズム

疲労が起こる一方で、人の身体は上手くできており、疲労回復の働きも存在します。
例えば、エネルギー不足になると、食欲が刺激されて、エネルギーを補給します。また、人の身体には、活性酸素の働きを抑える抗酸化力が備わっています。

抗酸化力は年齢とともに低下するため、抗酸化作用のある食品を摂ることで、その低下を遅らせることができます。さらに、人には、疲労因子FFの発生に反応して、傷ついた細胞を修復し、疲労因子FFを除去するのが疲労回復因子 FR(ファティーグ・リカバー・ファクター)が備わっています。
FRを増やす方法は、食事と運動。

では、FRを増やすためには具体的にどのようなことを心がければよいのか、次の段落でご紹介しましょう。

疲労を溜めない予防策

身体には、疲労を回復する機能がありますが、多くのストレスがかかる場合には、より積極的に「回復」を促す対策を実践することが予防策となります。

睡眠を十分にとる


睡眠は細胞修復の時間。疲労を残さずに1日をスタートするため、十分な睡眠時間をとりましょう。

疲労回復に働く栄養素を摂る


1日3回のバランスのいい食事に加え、疲労蓄積の原因と言われる活性酸素を抑える抗酸化作用のある食品や疲労回復因子「FR」を増やしてくれる成分を含む食品を摂りましょう。どちらにも働くとっておきの成分がイミダゾールジペプチドという特定の動物の筋肉中で作られる物質の総称。


そのうちのひとつが「バレニン」という成分。聞き馴染みのない名前かもしれませんが、これを含む食品の代表例がクジラです。食品として摂るのが難しい場合は、その筋肉成分を含むサプリメントにより補うのもおすすめです。

軽い運動をする


運動をすると、疲労因子FFが増えます。それに反応して、疲労回復因子FRも一緒に増えていきます。FFは安静にしていれば30分程度で無くなりますが、FRは、運動後数時間に渡って体内に残り、FFを除去してくれます。


日常の何気ない生活ですが、ちょっとした自分への気遣いが疲労を溜めない予防策となります。「毎日、疲れがとれない…」と悩んでいる方は、ぜひ試してみてください。


<執筆者プロフィール>
山本ともよ(やまもと・ともよ)
管理栄養士、サプリメントアドバイザー、食生活アドバイザー
株式会社 とらうべ 社員。企業で働く人の食と健康指導。糖尿病など疾病をもった人
の食生活指導など活動中