これまで、日本での「爆買い」の第一目標とされてきたスマート便座。「日本にわざわざ便座を買いに行く」という由々しき状況に、ついに中国メーカーが日本に負けじと販促攻勢を仕掛け始めた。それが「便座を買って日本の桜ツアーご招待」キャンペーンだというから、なんとなく可笑しい。

 中国メディア・捜狐は19日、ハイアールのスマート便座がこのほど「最強」のインセンティブを打ち出し、天猫や京東の旗艦店で便座を購入した客に対して「無料で日本の桜が見に行けるチャンス」を付与するキャンペーンを実施しているとする記事を掲載した。

 記事は、近ごろ中国国内でスマート便座の認知度が高まり、ニーズが急増しているものの、国内製品の「力不足」によって消費者が「日本に行って買わざるを得ない」状況に陥っていたと紹介。そして、日本で買った便座について「現地の水や電気にマッチせず、詰まりやすい。アフターサービスも受けにくい」といった声が多く寄せられているとした。そこで同社では日本の研究機関と協力して技術的な「突破」に成功、新たな製品シリーズを打ち出したと説明した。

 多分に宣伝的な要素が混じった文章ではあるものの、水や電気そしてアフターサービスの問題があるというのはあながち間違いとも言いきれないだろう。そこには、使う側が正しく設置できているか、正しく操作しているかという問題もあるはずだ。そういった意味でも、外国から買って帰ってきた物のサポートは受けにくい。

 記事はまた、6日間の「日本の桜ツアー」について、大阪から京都、名古屋を経由して東京、さらには熊谷に行くと説明。桜の花を観賞するとともに、日本の陶器メーカーや熊谷にあるハイアール研究開発センターも訪れ、メーカーとユーザー間での意見交換を実施すると伝えている。

 「日本に行かなくても桜は見られる」という主張がある一方で、日本の桜見物が奇しくも「日本に負けるな」と叫ばれている便座の販促に利用されることからは、中国において「桜といえば日本」というイメージが定着していることを思わせる。もちろん、日本にある研究開発センターを訪れるという重要な「使命」を持ってはいるのであるが。

 「便座を買いに日本へ行く」よりも、「便座は国内で買って日本に桜を見に行く」というほうが、「観光」という視点に限って言えばより健全であるようにも思える。経済的な話は抜きにして、である。(編集担当:今関忠馬)(イメージ写真提供:123RF)