毎年約200万人もの人が訪れるという東京のお花見の名所、上野公園。その奥の一角に、屋外と屋内で同時に桜を楽しめるスポットがあることを知っていた?

上野公園内にある「東京国立博物館」では、2016年3月15日(火)から4月10日(日)にかけて、「博物館でお花見を」を開催。こちらは今回で8回目となる春の人気企画で、期間中は、桜にまつわる名品が本館の展示室に登場するそう。該当する作品には「桜マーク」が付いているそうなので、マークを目印に桜めぐりを楽しんで。

「各部屋には鑑賞の証となるスタンプが置いてあり、これを5つ集めるとオリジナル缶バッジのプレゼントが贈呈されるスタンプラリー『本館(日本ギャラリー)桜めぐり』を行っています」と、広報担当者さん。

「宮廷の美術」や「暮らしの調度」、「浮世絵と衣装」など、各展示室にはそれぞれテーマがあって、桜や春をモチーフにした作品がテーマごとに展示される。作品によって展示期間が異なるので、注意を。

例えば、写真の近代京都画壇の基礎を築いた画家、塩川文麟(しおかわぶんりん)が描いた「嵐山春景」は、4月10日(日)までの展示。「近代の美術」をテーマにした本館18室に飾られているこちらは、桜の名所として名高い京都・嵐山の春を描いた作品で、京都生まれの文麟が好んで描いた題材とか。

桜のモチーフは工芸品にも数多く見られる。写真の焼き物は、本館13室に展示される、江戸時代後期に京焼の名工といわれた仁阿弥道八(にんなみどうはち)の代表作のひとつ。白泥と赤彩で描かれた満開の桜に、繊細な「透かし」が入って、華やかな桜の空間を感じさせてくれる。

さらに、暮らしの調度を集めた展示室(本館8室)では、満開の桜を皿全体に配した装飾性の高い鍋島焼や、繊細な彫金の技と大胆な構図で桜の花びらを散らした酒入(さけいれ)など、江戸時代の春を楽しむ暮らしがうかがえるような名品が並ぶ。同室の展示は4月17日(日)まで。


また、刺しゅうで桜を描いたものや春を感じさせるデザインの着物など、本館10室に4月24日(日)まで登場する8件は、ファッションが好きな女子におすすめ。写真は、江戸時代の「打掛」で、満開の桜が華やか。こちらは、5月5日の端午の節供のときの厄除けの薬玉をデザインしたもので、実際には桜の時期と少し季節がずれるけれど、おめでたい柄の晴れ着として作られたそう。

このほかにも、同室には、お花見の様子を描いた浮世絵が26件 展示されるとか。江戸の人々の、桜に対する浮き立つ気分が感じられるはず。


実は、博物館の構内全体では約120本もの桜があり、本館北側にある庭園には、ソメイヨシノをはじめ、オオシマザクラ、ヤエベニヒガン、エドヒガンシダレなど10種類以上の品種の桜が植えられていて、隠れた桜の名所なのだとか。期間中は、この庭園も特別開放をするそう。

「庭園内には、京都御所から移築された『九条館』や、江戸時代の人気絵師・円山応挙の襖絵が見られる『応挙館』など、歴史的にも価値が高い5つの茶室も点在します。3月25日(金)、4月1日(金)、8日(金)の3日間は、19時30分までライトアップを行うので、ぜひお楽しみください」(同)


また、関連イベントの中でおすすめは、屋内外で行われる無料ミニコンサート「桜の街の音楽会」。3月16日(水)と18日(金)の11時からは、4種類のサクソフォーンによる「Vive(ヴィーヴ:万歳)! サクソフォーン・クヮルテット」、24日(木)と30日(水)には「ヴァイオリンコンサート」を予定しているそう。

どちらも「東京・春・音楽祭」参加アーティストの演奏なので、聴きごたえもあるはず。にぎやかな上野公園から一歩入った東京国立博物館で、本物の桜と桜のアートを一度に楽しむ欲ばりなお花見を

画像 上:嵐山春景 塩川文麟筆 明治6年(1873) 塩川文鱗氏寄贈
画像 中:色絵桜樹図透鉢 仁阿弥道八作 江戸時代・19世紀 東京国立博物館蔵
画像 下:打掛 紅綸子地御簾薬玉桜模様 江戸時代・18世紀 東京国立博物館蔵