彼は終わった選手と言われていた。あるいは、もう終わりに差し掛かった選手だと言われていた。だが、マルセイユと欧州を離れて6カ月。メキシコリーグで戦う30歳のアンドレ=ピエール・ジニャックは、フランス代表の座も取り戻した。マテュー・ヴァルブエナの恐喝事件への関与が疑われるカリム・ベンゼマの苦境を生かす形で、今ではEURO2016のレギュラー候補だ。

ジニャックは絶好調だ。ゴールを量産している。中央アメリカで、まるで母国にいるかのように栄光を手にしているのだ。彼にとっても思いもしなかった“リベンジ”だろう。

ジニャックは昨季のリーグアンで得点王ランク2位だった。アレクサンドル・ラカゼットには6点差をつけられたが、ズラタン・イブラヒモヴィッチには2点差をつけて上回っている。そしてジニャックはオファーを待った。その一つがインテルだ。だが、契約満了でフリーとなるにもかかわらず、インテルが具体的に前進することはなかった。

そしてジニャックは、年俸400万ユーロ(約5億3000万円)の4年契約をオファーしたティグレスのオファーを受け、周囲を驚かせた。だが、ジニャックは15ゴールとリーダーとしてのパフォーマンスでそれに報い、メキシコの熱狂的なサポーターのアイドルとなった。ティグレスは先日、ジニャックのゴールもあって、リーグを制覇している。

気迫あるパフォーマンスはフランスメディアでも注目され、マルセイユ時代に指導した経験を持つフランス代表のディディエ・デシャン監督も、ジニャックを代表に呼び戻した。ベンゼマ抜きの攻撃陣を再構築するためだ。ベンゼマはヴァルブエナの事件で捜査され、フランス代表から暫定的に停止処分を科されている。そこで、フランスはメキシコで蘇ったジニャックに期待しているのだ。