イオンが公表しているWAONの累計カード発行枚数推移

グラフが2月時点の集計となっているのは、イオンの旧会計年度を反映したものと考えられる。2015年5月のデータは年度途中なので除外すれば、おおよそ年率で20〜30%程度の上昇率であり、ほぼ比例のグラフとなっている。イオンは2014年以降に決済件数の公表をストップしてしまったため、WAONで確認できるのは累計発行枚数と年間決済金額のみとなっており、それが電子マネー各社の決済件数を横並びで比較した最新データがない理由だ。

なお、nanacoの7月末時点での発行枚数(モバイルアプリ含む)が4112万枚(http://www.nanaco-net.jp/corporate/company/)、Suicaが7月時点で5400万枚となっている。楽天Edyは同社の公式サイトで直近のデータを確認できていないが、2013年末で7800万枚、2014年末で8500万枚という数字が手持ちの資料で公開されており、本稿を執筆している2015年11月時点においても発行枚数でトップにあると考えていいだろう。

冒頭の筆者の疑問に話は戻るが、すでに各社のサービスで累計発行枚数が日本の人口の半数ないしはそれ以上をカバーしているにもかかわらず、いまだ伸び続けているのは驚異的だ。「1人が複数枚の(同種の)カードを所持している」「前のカードをなくして再発行が行われている」といったことが考えられるが、この場合はユーザー数そのものが増加していないため、決済件数が増えにくい。だがWAON、nanaco、Suicaの決済件数は発行枚数の伸びに比例して増加しており、純粋に「利用者が拡大している」のだと考えるのが適当だ。一方で、楽天Edyは発行枚数の伸びに反して決済件数は減少している。こちらは「クレジットカードなどに機能が付帯する」といったケースで発行枚数が増えている一方で、実際の利用には大きく結びついていない可能性が考えられる。

このように、利用状況において明暗が分かれつつあるのが国内の電子マネーの現状だ。特に発行枚数の増加とともに利用件数も上昇を続けるWAON、nanaco、Suicaは驚異的で、これはカード発行の手軽さとポイント加算というメリットを存分に享受したものとなっている。利用可能な店舗が日々増加している一方で、スマートフォンやケータイで利用可能な「おサイフケータイ」は、スマートフォンの普及率ほどには利用が広まっていない。次回は、このあたりの事情に少し触れてみる。