歌手のSoweluさん(33)が17日付けのインスタグラムで、ポリープ手術を受けたことを明かしました。3日間の「完全沈黙」が必要で、家族や看護師とは筆談を通じてやり取りしたとのことですので、かなり重い症状であったことが伺えます。Soweluさんは「人生初の全身麻酔」への不安にもふれています。全身麻酔は、普通の麻酔(局所麻酔)とどう違うのでしょうか。

声帯ポリープの手術


声帯ポリープは歌手やアナウンサーなど、「声」を仕事にしている人に多く見られる疾患です。振動することで声を生み出す声帯に膨らみができ、声帯全体がまんべんなくキレイに振動しなくなるので、声がかすれたり、低くなったりといった症状が出ます。保存療法で回復を期待できないときは手術を選択します。

ポリープ手術は、ポリープの大きさや形状などの条件を満たせば日帰りで行うこともできます。この場合は、ファイバースコープという機器を使い、局所麻酔のもとでポリープを摘出します。手術中も意識があるので声の状態を確認しながら手術を進めることができます。

現在主流となっている方法は、全身麻酔のもとで行う「顕微鏡下喉頭微細手術」です。喉頭鏡という管を咽喉までいれ、顕微鏡を見ながら繊細な手術を行います。Soweluさんは全身麻酔で手術したとのことですので、顕微鏡下喉頭微細手術だったと推測されます。

全身麻酔と局所麻酔の違い


局所麻酔は抹消神経に局所麻酔薬を注入するものです。麻酔後に意識が残っているものは局所麻酔です。手術中に意識があるので会話ができるなどのメリットがありますが、治療への恐怖心を感じやすいというデメリットもあります。

全身麻酔の特徴は「4つのA」によって示されます。つまり、無痛(Analgesia)、健忘(Amnesia)、無意識(Anesthesia)、不動(Akinesia)です。全身麻酔には、麻酔ガスを吸わせる吸入麻酔法と、点滴や注射による静脈麻酔法があります。全身麻酔を行うと患者は深く眠り、痛みを感じなくなります。健忘というのは、手術中の出来事を覚えていないということです。手術中に恐怖感を感じることはなく、また、手術が終わった後に、「つらい手術だった」といった記憶が残ることもありません。「不動」というのも重要な要素です。患者が動かないので、医師は手術に集中しやすくなります。

全身麻酔中は呼吸が弱くなるので、呼吸を補うためのチューブを口から気管に入れる「気管内挿管」を行います。全身麻酔の後で喉がひりひりすることがあるのは、チューブが喉をこするためです。全身麻酔中はガスや点滴によって麻酔薬を流し続けます。麻酔薬を止めると意識が戻りますが、術後の全身管理のために、入院が必要です。

喉の奥は軽くふれただけで嘔吐反射が起きます。全身麻酔を行えば嘔吐反射が起きないので、適切に手術を行うことがそれだけ容易になります。不安を感じていたというSoweluさんですが、手術は無事に終わったそうです。全身麻酔の働きによって痛みを感じることもなく、また、健忘作用によって手術中の記憶も残っていないことでしょう。今年5月に約3年ぶりの活動再開を報告したSoweluさん。より良いかたちで復帰を果たされることを願っています。

監修:岡本良平医師(医学博士)