シリーズ二話目も息を呑む作画クォリティ!クラブ・エデンも舞台で再現


立てよ国民!ジーク・ジオン!すでに第二の本能になっている条件反射を、いろんな意味でぐっと抑え込まなければいけない胸像のお出迎え。
ここは豊洲PIT、『機動戦士ガンダム THE ORIGIN II 哀しみのアルテイシア プレミアム上映会』の会場だ。そのロビーに飾られた胸像はジオンズムダイクン、『機動戦士ガンダム』の一年戦争で地球連邦軍と戦いを繰り広げたジオン公国の精神的な指導者だ。が、彼は政権を簒奪したザビ家に謀殺されてしまった。父ダイクンを奪われた上に、政治利用された遺児キャスバルことシャア・アズナブルの無念さはいかに…といった想いが渦巻いた。
このイベントは、10月31日から映像展開がスタートする『機動戦士ガンダム THE ORIGIN II哀しみのアルテイシア』を世界最速で見られる上映会。今年2月に公開された『機動戦士ガンダム THE ORIGIN I 青い瞳のキャスバル』に続くシリーズ2作目であり、ファースト(最初のテレビアニメ『機動戦士ガンダム』)のキャラクターデザインや作画ディレクターを務めた安彦良和さんが、同作を再構成したコミックが原作だ。

今作では兄キャスバルと妹アルテイシアの二人が地球に亡命し、エドワウとセイラへと名前を変えて平和な日々を送る。そんな二人に迫るザビ家の魔の手、そして「シャア・アズナブル」との運命の出会い。一方では地球連邦に牙をむくための新兵器・モビルワーカーの開発も進む……と波乱の渦巻く展開に。


イベントは、原作者であり総監督も務める安彦良和さん、エドワウ役の池田秀一さん、セイラ役の潘めぐみさん、ランバ・ラル役の喜山茂雄さん、ハモン役の沢城みゆきさんによるトーク・ショーから開幕。舞台となるのはクラブ・エデン、すなわち歌姫ハモンが歌い、恋人ラルと出会った場所だ。壇上に劇中のイメージそのままに再現されたセットには、華やかな電飾もあり、宇宙世紀のボトルも取り揃えている。「サンライズウィスキー」というどこかで聞いたようなラベルまで再現する凝りかただ。
総監督やキャスト陣それぞれの思いを語った後、いよいよアニメ本編が上映。緻密で個性的な安彦キャラが、原作そのままの絵柄で動く作画は今回も凄まじく、表情も細やかで記号的な悪役や善玉なんて一人もいない。
人間ドラマのかたわらモビルワーカーのメカアクションも充実で、ランバ・ラルと黒い三連星の一人・マッシュとの激突もありで、約1時間の上映が怒涛の勢いで終了した。

オーディションを受けなかったと自慢した古谷徹氏!ぶっちゃけトークが面白すぎ


満足度の高さが表れた拍手喝さいのなか、再び安彦さんはじめキャスト陣が登壇して、トークショーの第二部へ。本来は監督や総作画監督が来るべきところを代表して……と現場で奮闘を続けるスタッフに敬意を払われた安彦総監督。
 続いてアフレコ現場での話に移ると、安彦総監督と沢城さんとの楽屋トークが明かされる。「沢城みゆきさんは峰不二子だそうで……」「三代目です」と、別の国民的アニメの話にどっと湧く会場!


サブタイトルにある「赤の決意」とは、エドワウ・マスへと名前を変えさせられたキャスバルが、自ら「シャア・アズナブル」になろうとする決意のことだ。ファーストでシャアを演じた池田さんが今作で彼の過去を演じることになったのも、また「決意」だった。
自ら志願して、シャア役をオーディションで勝ち取ったのである。

若いエドワウを演じるために、一ヶ月酒断ちをしたという池田さん。そのかいあって、一回でバッチリ収録は成功。その後に一杯やっていた池田さん、なぜか「もう一回やらせてくれ」と頼み込み、再びオンリー撮り(他の役者さんとは別に収録)。

「間違いなくよくなった。一杯飲んだのが良かった」と褒めちぎる安彦総監督。え、それって断酒の意味が……と美談かどうか分からなくなるのが最高!

さらに池田さんエドワウやるの?とシャアのライバル・アムロを演じた古谷徹さんが聞きつけ、今回1カットだけ出ている幼いアムロを演じることになった。原作では喋ってなかったが、わざわざ台詞を用意したとか。
いい話で終わりそうなのに「僕はオーディションを受けなかったよ」と池田さんに自慢したという古谷さんがロック! ベテラン夫婦のように息ピッタリなお二人の仲良さもかいまみえた。

そんな兄・エドワウ=池田さんと妹であるセイラを演じる潘めぐみさんとは、実際にはけっこうな年齢差あり。
「この仕事を始める前に、母(潘恵子さん。シャアの恋人ララァ・スン役)を通じて池田さんと出会っていました。ずっと守って導いてもらった方と兄妹を演じられて幸せです」
そう憧れを口にした潘さんに対して

「出会ったのは藩さんが高校生の頃でしたね。Zの劇場版(2005〜2006年に『機動戦士Zガンダム』劇場版の三部作が公開)のとき、主題歌を歌っていたGACKTさんに会いたくて来てたね」とぶっちゃける池田さん。美しい思い出がー!

歌姫ハモンがライブで熱唱!安彦総監督が目指す壮大な歴史ドラマ


「私はガンダム初心者でしたが、収録現場はみなさんワクワクしていました。(ガンダム好きの)男たちの夢の現場に立ち会わせてもらってるんだなって」(沢城さん)
「(ランバ・ラルの)2代目をやらせて頂くのは(初代は広瀬正志さん)声優として一番つらい仕事。悪い意見を聞いていたら、やっていられない」(喜山さん)
「アルテイシアは周りの大人や政治に振り回されて置き去りにされて、まさに“哀しみのアルテイシア”なんです」(潘さん)
そこに挿入歌を担当するアーティスト・澤田かおりさんも登場し、ハモンがクラブエデンで歌う「By Your Side」を熱唱。しかも劇中ではすべて英語だったのが、二番は日本語の歌詞というスペシャルバージョン!

約30分の間に、半時間とは思えない濃密なウラ話やライブが振る舞われたトーク・ショーも。
「私の今の本業は歴史漫画家ですが、ガンダムも奇跡的にそれぞれの生き様を描けた歴史物語だなあと。まだ絵は描けますので、今のこのクオリティでやり遂げたい」という安彦総監督のお言葉で締めくくり。壮大な歴史ドラマであり、史上初の「安彦キャラが設定のまま動くアニメ」であり、キャスト一人ひとりがハマり役のシリーズを、最後まで見届けさせて頂きたいです!
(多根清史)