カンボジア戦で、本田圭佑が決めた1点目も、吉田麻也が決めた2点目も、その前のパスを出したのは山口蛍だった。山口はミックスゾーンで、いつもどおり、ややうつむき加減で報道陣の前に立ち止まった。そしていつもどおり小さな声で話を始めた。
「今日、実は2点に絡んでいると思うのですが」と報道陣が聞いても、山口は「……」と小さく首を傾げるだけ。「試合前に話を聞いたときはカウンターに備えて残ると言っていたのに、ずいぶん攻撃参加していましたね」という話にも「まぁ……相手が思った以上に後ろにいて、全然前に出てこなかったから……」と淡々と答える。
その山口が積極的に話をしたのはチームメイトトの連携について話したときだった。
「ボールをもらったときに、あまり長く持たないように心掛けています。ワンタッチやツータッチでボールを離そうと思っています。そっちのほうが中盤はリズムが出ると思いますし」
そう言いながらも、山口は自分に対して厳しい目を持っている。「そういうプレーをしていることが、周りから見るとシンプルすぎて工夫が無いと言われるのかもしれませんが」と言葉を続けた。だが、それは決して自信のなさではない。「リズムが出ると思うので、自分は、ボールをキープするほうでもないので、シンプルに。周りにクオリティの高い選手がいるから、そこにパスを出そうと思っています」
山口の声が大きくなった。それだけ自分がこだわっているのが「シンプル」ということなのだろう。
そして、そういう山口のリズムがわかっているから、周囲の選手も山口からのパスを予測し、次のプレーを選択できるのだろう。また、「(本田)圭佑君とは話をして、どういうボールが欲しいとか、ここに顔を出して欲しいとか言われているので、そういうのを考えながらやっています」というパスの質が、本田の先制点をお膳立てしたとも言える。
「ともかく勝ち点3が取れてよかったですね」と声をかけられて、山口はやっと少しだけ笑った。
「でも、まだアウェイでは勝ってないので。アフガニスタン戦は9万人ぐらい来ると聞いています。僕はアウェイの満員の雰囲気が好きで、気合いが入るんです。ホームの満員もうれしいけれど、アウェイは闘争心が掻き立てられます」
物静かだがアグレッシブ。次の試合でも山口は静かに燃えることだろう。
【日本蹴球合同会社/森雅史】
(撮影:大内翔太/フォート・キシモト)
(撮影:大内翔太/フォート・キシモト)
(撮影:大内翔太/フォート・キシモト)
(撮影:長瀬友哉/フォート・キシモト)
(撮影:長瀬友哉/フォート・キシモト)
(撮影:長瀬友哉/フォート・キシモト)
(撮影:大内翔太/フォート・キシモト)
(撮影:大内翔太/フォート・キシモト)
(撮影:大内翔太/フォート・キシモト)
(撮影:大内翔太/フォート・キシモト)
(撮影:大内翔太/フォート・キシモト)
(撮影:大内翔太/フォート・キシモト)