日本で使うスマホは「技術基準適合」を取得する必要がある。もちろん普段それに気が付かない人でも大丈夫だ。日本のキャリアで売られているスマホには全てこの技適マークが付いているのである。ところが海外でスマホを買った場合や輸入してスマホを買う場合は、技適マークはついていないことが大半だ。つまり、海外で見つけたスマホに日本のキャリアのSIMカードを入れて利用することは法律上できない。

ところが最近、そんな状況が少し事情変わってきた。海外販売のスマホでも日本の技適を取得した製品が出てきているのだ。


日本のキャリアのSIMを入れてスマホを使う場合は技術的マークが必要。現在はデジタル表示もOKで、端末内部での表示も可能


例えばソニーモバイルコミュニケーションズの海外モデルのXperia Z3「D6603」や、Xperia Z3 Compact「D5803」である。
総務省の関連のホームページを見ると、この2機種が技適を取得していることがわかる。実は、同じ海外モデルXperia Z3といっても、地域の通信方式に合わせて複数の製品があるのだ。Xperia Z3の場合、他にも「D6602」「D6606」「D6643」などの製品がある。もちろん「D6603」以外のものは技適を取得していない。

海外のスマホが技適を通っているということは、そのまま日本で発売することができることを意味する。
例えば日本のドコモやauで販売するXperia Z3には、それぞれ背面にキャリアのロゴが入っている。また各社とも自社アプリが多数入っており事実上の自社専用スマホとして販売している。
これに対して海外版のXperia Z3はキャリアのアプリは一切入っていない。また格安なMVNOキャリアのSIMカードを入れて使うこともできる。


海外で販売されているスマホでも技適を通ったものがでてきている


実は日本でもすでにそのような使い分けができるスマホがある。そう、アップルのiPhoneである。iPhoneは3キャリア版が提供されているが、同時にアップルストアでSIMフリー版も販売されている。
キャリアで買えば大幅な割引が受けられるものの、回線の縛りや毎月の支払額もかなり高めとなる。一方、SIMフリー版は、キャリアの縛りがなく、格安のMVNOキャリアのSIMカードを利用することができる。すでにiPhoneでは、選択肢が用意されているのである。

もしもソニーモバイルが今後Xperia Z3やZ3 Compactの海外販売品を日本でSIMフリー版として提供するようになれば、ユーザーの選選択肢が広がり、日本のスマホ市場の活性化が進むかもしれない。

もちろん、選択肢が増えてもキャリアの2年契約でSIMロックスマホを買うという人のほうが多いことには変わりは無いだろう。しかしキャリア購入では、2年間は魅力的な新機種が発売されても気軽に買い替えができないのも事実。一方SIMフリースマホは本体代金をクレジットカードで24回払いにすれば初期負担額は抑えられるし、MVNOの格安SIMと組み合わせれば月々の負担も小さくできる。ランニングコストを考えると、送金額ではSIMフリースマホのほうが安くなるという例も多い。また、誕生日プレゼントや会社経費で一括購入など、単体で購入できるSIMフリースマホならば簡単だ。


活用範囲が広がるSIMフリースマホ

ヨーロッパではキャリアのSIMロック版と、自由に使えるSIMフリー版という選択肢が用意されている。消費者は自分の使い方や懐具合によって買いわけているのだ。
総務省は2015年にはスマホのSIMロック解除を義務づける方向だ。今回のXperia Z3、Z3 Compactの海外版が技適取得したのは、こうした流れ先取りしたのかもしれない。

いずれ日本でも同一メーカーのスマホがキャリアのSIMロック版とメーカー販売のSIMフリー版の2つが選択できるようになれば、スマホの買い替えや複数台持ちも今より手軽になるだろう。また、プレゼントなど、新たな市場も生まれるだろう。アップルに続いてソニーモバイルコミュニケーションズにはぜひともSIMフリースマホを日本で販売してもらいたいものだ。


山根康宏