iPhone 6/6 Plusの予約台数が過去最高数を記録した。アップルによるとこの2機種の予約注文は予約初日の9月14日に400万台を記録。これは2012年のiPhone 5の初日の記録の200万台の2倍となる数字だ。発表直後からiPhone 6/6 Plusは既存のiPhoneよりもサイズが大型化されたことで賛否を読んでいたが、好調な予約数によりサイズの大型化が多くの消費者に受けいれられていること証明したといえるだろう。

iPhone 6/6 Plusそれぞれの予約数の内訳は公開されていない。とはいえスクリーンサイズの大型化を懸念する声がある中、消費者はこの新製品を大きく歓迎した結果となった。だが画面の大きさについてはすでにAndroidスマホがここ数年でiPhoneを上回る画面サイズの製品にいち早くシフトしており、今や5インチサイズは大型ではなく標準と言える存在になっている。

2014年9月、各メーカーの新製品発表では、5.7インチや6インチと言ったさらに大きい画面サイズの製品への移行が進んでいる。iPhoneも2年遅れで画面サイズがAndroidに追いついた格好だ。

ポケットから片手でさっと取り出しそのまま文字入力したりソーシャルサービスを見たりと、小型サイズのスマホに帯する需要は今でも高い。だが世界の流れは確実に画面の大型化に向かっている。調査会社アクセンチュアが世界で行った消費者調査によると、今年中にスマホを買うと考える人の48%がファブレット、すなわち5インチをはるかに超える大画面スマホの購入を検討しているという。

ここでいうファブレットとは5.7インチから7インチ弱までのスマホだが、購入予定者の約半数が大画面モデルを求めているのは、揺るぎない世界の流れなのだ。今まで1サイズモデルでの新製品を投入してきたアップルが5.5インチと言う特大画面のiPhone 6 Plusまで発表したのも、世界のトレンドをしっかりと追いかけようという姿勢からだろう。

注目したいのは、大画面スマホを好んでいる消費者が先進国よりも、どちらかといえば新興国に多いことだ。これはタブレットやパソコン代わりに大画面スマホ1台で済ませてしまおうと考える消費者が多いと推測されている。これから普及が見込める市場の大きさを考えれば、新興国の需要が大きい大画面スマホに注力するのは、理にかなった選択といえる。

また、この調査によればファブレットへの興味は先進国でも決して低くはない。たとえば、イギリスとフランスが37%、カナダが39%、イタリアが42%4と、大画面スマホ需要は確実に世界中で高まっているのである。



大型化したiPhoneはスマホの新しい使い方に適している


これほど世界中で、大画面スマホの需要が上昇している背景の一つは、やはりソーシャルサービス(SNS)を中心としたスマホの使い方の変化が大きいだろう。タイムライン上に流れるメッセージや写真を見るには大画面のほうが見やすいのは明らかだ。さらに昨今は、テキスト以上に写真や動画の投稿も多くなっている。タイムラインに表示された写真も大画面スマホならばいちいち拡大表示する必要もなく、そのまま閲覧ができる。またLTEをはじめとする通信の高速化により、高画質で美しい写真や動画もスマホ上に一瞬で表示できるようになったことも見逃せない。映画や動画などのストリーミングを視聴しない人でも、SNSのタイムラインで日常的に写真や動画を見る生活スタイルが、自然と大きな画面を必要とする意識を育んだともいるだろう。

このような世界の動きの中、日本のiPhoneユーザー間ではまだまだ片手で楽に持てるサイズの現行iPhoneサイズの人気が高いようだ。iPhone 6 / 6 Plusの大型化に対して「片手では操作しにくくなる」「あのサイズで通話するとはずかしい」などの懸念の声もよく聞かれる。

だがそれも杞憂に終わるのではないだろうか。日本ではじめてiPhoneが販売された時も、ガラケーよりも平たく大きいサイズは使いにくいとも言われたものだ。また、Androidで5インチ機種が発売されたときも、日本のユーザーには大きくて普及はしないのではと言われた。しかし、現在は多くの女性がXperiaやGALAXYなど5インチ超のAndroidスマホを利用している。

iPhone 6/6Plusの購入前、あるいは購入直後はサイズの大型化に慣れず否定的な意見も多く出てくるかもしれない。だが最終的には誰もがそれに慣れ、気が付けば4.7インチや5.5インチのiPhoneを使うことが当たり前になっているだろう。

それは何よりもサイズが変わろうがiPhone 6/6 Plusは紛れも無くアップルの製品であり、新しいiOS8と大画面に適したユーザーインターフェースはiPhone 6 / 6 Plusを大画面のAndroid以上に使いやすいものにしてくれることへの期待があるからだ。そしてこれまでのようにiPhone 6 / 6 Plusの大画面を活かした新たなアプリやサービスが続々と生まれてくるのではないだろうか。なぜならすでに大画面が受け入れられているAndroidスマホでは、マルチウィンドウなど大画面を活かした機能が次々に登場しているからだ。

Androidに画面サイズで追いついたiPhone 6 / 6 PlusがどのようにしてiPhoneらしさを創出していけるか、いよいよそれが問われるだろう。


山根康宏