昨年3月の東日本大震災は、日本列島の地殻構造を大きく変形させた。特に震源域の海底は東方向へ約50mも水平移動し、垂直方向にも約7mの「隆起」が起きた。この激しい地殻変動の影響は陸上にも波及し、国土地理院は日本列島の平均高度をマイナス2.4cm、経度を東へ27cmも移動修整したほどだ。

 このように大地震と地殻変動には大きな関連性があり、それが地震発生の予測につながることもある。実は本誌は、4年前から東京湾岸地帯の地殻変動を調査している。そして今年4月の大潮時刻における芝浦運河の水位から、地盤が隆起しているとしか思えない数値が計測されたのだ。

 調査を指導してくれた海洋学者の辻維周氏が説明する。

「海水面の上下変動は、海岸地形や太陽と月の位置関係によって違いが生じ、日本各地の検潮場で積み重ねてきたデータから計算した平均海面が基準になります。芝浦では、2008年4月6日の大潮は平均海面から約196cmの高さでした。ところが、今年4月7日の大潮は約2mと予測され、4cm高くなっています。さらに今年は陸地の平均沈降値2.4cmを加えるので、4年前の大潮と比べて約6.4cm高い位置に達する見込みです。つまり、4年前よりも6.4cm高ければ正常で、これを上回れば、芝浦など東京湾岸で、どれだけの陸地沈降が起きたかが判断できるわけです」

 しかし、その芝浦運河で満潮時の水面を計測したところ、4年前に比べ約15cmも低くなっていた。本来上がるはずだった6.4cmを足すと、合計で21.4cmも水位が下がっていることになる。これは何を意味しているのか。

「4年間で平均海面が20cm以上も下がるはずはないので、これは芝浦地域の陸地のほうが大規模に隆起したと考えられます。しかし、そんな事実は今のところ耳にしていません。公的機関の測量が終わっていないのか、あるいは故意に発表されていないのか」(辻氏)

 調査範囲をさらに広げると、最大30cmにも達する湾岸地域の隆起は、芝浦運河地帯を中心に、北は港区の竹芝地区から南は品川区の「勝島」付近まで、7〜8kmの範囲にまで広がっていることがわかった。多くの地震関連記事を取材・執筆してきたジャーナリストの有賀訓氏は、この現象を次のように分析する。

「大地震の衝撃で地盤が沈むならともかく、これほど広範囲な隆起が東京西部で起きた原因は、ふたつ考えられます。ひとつは、多くの研究者が指摘するように、去年の巨大地震で東日本の地殻に生じた無数の亀裂に、太平洋の深海底から海水が潜り込んだこと。もうひとつは、東京東部の地下に広がる『南関東ガス田』のメタンが地殻のひずみの影響で高熱化し膨満している可能性です。どちらにしろ、この現象は一時的なもので、首都直下型地震が近づいた証拠だと警戒すべきでしょう」

 今、東京湾岸の地殻に何かが起こっていることだけは間違いないようだ。

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