3月上旬、お台場のダイバーシティ 東京 プラザの6階にオープンしたアメリカンチャーニーズ「パンダエクスプレス」。ビジネスマンから観光客まで幅広い顧客層を想定しているという(記者撮影)

東京・お台場。国内外から多くの観光客が訪れるこの地に、アメリカ・ロサンゼルス発祥の外食チェーンが東京初上陸を果たした。

3月中旬、お台場の商業施設「ダイバーシティ東京 プラザ」の6階にオープンしたのは「PANDA EXPRESS(パンダエクスプレス)」という「アメリカンチャイニーズ」の飲食店だ。アメリカに留学や駐在、旅行の経験がある人には、なじみがあるチェーン店かもしれない。

サイズを決めてメニューを選ぶ

そもそもアメリカンチャイニーズとはどういうジャンルなのか。運営会社によれば「中華料理とは異なる」と主張する。中華料理の技術は用いているものの、アメリカの食材を使用し、アメリカ人の味覚に受け入れられるように開発された料理を「アメリカンチャイニーズ」と言うそうだ。


パンダエクスプレスでの注文は、まず3種類のサイズから1つを選ぶ(記者撮影)

実際、お台場の店舗を訪れると、いくつかの特徴が見えてくる。

1つ目は注文方法だ。店内のカウンターに行くとまず、料理を盛りつける器を決める。サイズは「ボウル」(790円、税抜き、以下同)、「プレート」(990円)、「ビッグプレート」(1190円)の3種類。その後、すでにできあがっている料理の中から、食べたいメニューを選ぶ。真ん中のサイズにあたるプレートの場合、まずベースメニュー(主食)といわれるフライドライスやチャオメン(炒麺)などを選び、次にメイン(主菜)を2品選ぶという流れで注文する。


サイズを選んだら実際に商品を見ながら食べたいものを選んでいく(記者撮影)

看板メニューは「オレンジチキン」という商品。揚げた鶏肉に甘辛いオレンジソースを絡めたものだ。そのほかにも「モンゴリアンポーク」といった、オリジナルソースでマリネしたポークと新鮮なマッシュルーム・パプリカ・ タマネギ・ネギを炒め、風味豊かなガーリックソースで仕上げた商品も売れ筋の1つだ。

常時20品程度の作りたての商品が提供されており、日本独自のメニューとしてハイボールも取り扱う。

パンダエクスプレスは1983年にアメリカ・カリフォルニアで開業し、現在はアメリカ全土のほか、カナダ、ドバイ、メキシコ、サウジアラビア、韓国など計10カ国で2000店以上を展開。今回のお台場の店舗が東京初上陸ということだが、日本国内としては3店舗目となる。

パンダエクスプレスは10数年前に日本に進出するも、なかなか事業が軌道に乗らず1度撤退。2016年11月にラゾーナ川崎(神奈川県川崎市)に日本再上陸を果たし、2018年5月に三井アウトレットパーク木更津(千葉県木更津市)に2号店がオープンした。実はこの再上陸時から日本でのパンダエクスプレスを運営を担うのが、ラーメン店「一風堂」を運営する力の源ホールディングス傘下のI&P RUNWAY JAPANだ。

一風堂は2008年にニューヨークに出店し、アメリカ初進出を遂げた。その後、アメリカ全土に一風堂のラーメンを広げようと、西海岸への進出を模索していたが、大きなハードルが待ち受けていた。同じ国とはいっても、アメリカでは州ごとに、食品衛生や労働、消防などの法律や条例などが違うことから、なかなか思うように店舗網を広げることができなかったのだ。


ボリューム感はかなりあるが、味は意外にもあっさりしている。うま味調味料のグルタミン酸を使っていないのが理由だという(記者撮影)

また、「カリフォルニアでは(出店する)通りが1つズレるだけで、まったくお客さんが来ない。現地の人が行きたいと思うような立地を見極めたうえで、出店する立地を選択する必要があった」(I&P RUNWAY JAPANの島津智明取締役)。

西海岸に進出するに際しては、現地の法律を熟知し土地勘のあるパートナーが欠かせない。そこで一風堂が声をかけたのが、カリフォルニア発で全米展開をしていたパンダエクスプレスだった。創業者同士が意気投合したこともあり、提携話は一気にまとまった。当初は一風堂の全米展開への布石となる西海岸進出でタッグを組んだわけだが、その際にパンダエクスプレスの創業者から、日本においてパンダエクスプレス展開の話が持ち上がり、一風堂を展開する力の源ホールディングスが日本での運営を担うことになったという。

ここにきてようやく出店拡大へ

今回、東京・お台場で3号店がオープンしたが、ラゾーナ川崎の再上陸1号店から3店舗目が開店するまでに、2年余りの時間を費やしている。出店スピードとしては遅い印象もあるが、島津取締役は「調理スペースや食材をストックする冷蔵庫や冷凍庫がある程度必要なことから、運営できる広さの物件を確保するのが難しかった」と語る。


テイクアウトは四角い箱に入れて持ち帰るのが特徴だ(記者撮影)

さらに、店内での調理工程が多いのもネックだ。厨房をのぞくと、1品1品を中華鍋で丁寧に調理していることから、それに対応できる人材を育成する必要がある。チェーン展開をするなら、店舗ごとの味のバラつきをなくすことが重要だ。

こうした点については、アメリカのパンダエクスプレス本部から担当者が定期的に来日し、味をチェックすることで味の均質化を図っているという。「2年以上の日本での経験からノウハウも蓄積され、ようやく出店拡大に舵を切ることができる」(島津取締役)。

すでに6月には沖縄で4号店のオープンが決定済み。その後も場所については明らかとなっていないが、年内に数店が開店する予定だという。日本の消費者にはなじみの薄いパンダエクスプレスは日本で根付くのか。オペレーションで一定の質を保ちながら、迅速な店舗網拡大ができるかがカギを握りそうだ。