[画像] トーク中のタモリの下半身の動きから目が離せない。タモリ@「京都 発見!クラシック」レポ

タモリがぶらぶら街歩きする番組「ブラタモリ」が4月11日から3年ぶりにレギュラー番組として復活する。完全復活を前に、今年1月、放送された特別編の舞台は京都だった。これまで都内のみだったロケ場所が地方に拡大──それも歴史ある街・京都ということで、いっそう興味深いものになっていたが、その完全版が3月27日に放送された。
完全版放送日を直前に控える3月19日、タモリが京都コンサートホールの舞台に立つという情報を得て、チケットを購入。桜のつぼみがピンク色になってきている京都に向かった。
タモリが出演するイベントは、京都市交響楽団による「京都 発見!クラシック VOL.1」。タモリはゲストとして、演奏の前に、ピアニストの山下洋輔と指揮者の広上淳一(常任指揮者兼ミュージック・アドヴァイザー)と1時間ほどトークを行うのだ。
このホール総席数1833席の広さだが、このイベントはチケット完売で当日券も出ない。観客の目的は、やっぱり生タモリだったのか、ステージにタモリが現れたときに激しくなった拍手には喜びが含まれていた。「生タモリ・・・」と感慨深げに声に出す観客もいたほど。その気持ち、とってもよくわかる。

トークは「ジャズ×クラシック 音楽との出会い」と題され、内容は、まず、タモリがまだ赤塚不二夫とも知り合ってなかったサラリーマンの頃に、山下洋輔と出会ったエピソード。この出会いがなかったら、いまのタモリは存在しなかったという神話的逸話は、山下の著作「ピアノ弾き翔んだ」も詳しく書かれているそうで、幾度となく語られてきたテッパンものなのだろう、タモリと山下の語りは極めて熟成されていた。
しかも、タモリ、山下、広上は、さすが音楽をやっている人たちだけはあって、やりとりがジャズセッションのようにリズミカルで、聞き心地がよく、あっという間に時間が過ぎていく。3人は、しゃべるペースをそろえ、だれかひとりがしゃべりすぎることのなく、言葉をいい間合いでパスしていった。
生タモリのトークで、気になったのはタモリの下半身だった。1本足の丸テーブルの前に、下手から山下、タモリ、広上の順に座っていて、真ん中にいるタモリはシンメトリーに両足を開いて座っていた。しゃべっているとき、その足は微動だにせず安定しているが、人が話しているのを聞いて笑うと、ひざが動き、膝頭がくっつき、若干内股になる。そして、そのままひとしきりひざを閉じたり開いたりしたあとで、またしゃべりだす。膝でリズムをとり、タイミングをはかっているように、割合規則正しかった。
それから、時折、タモリから見て右側に座っている山下のほうに右ひざを近づける。心理テストによくある、好きな人のほうにひざが向くというのは真実のようだ。
また、タモリは、自分が水を飲むとき、山下の空いたコップにも水を入れるという礼儀ただしさを見せた。常識からするりと抜け出したパフォーマンスをしながらも、恩人に対するリスペクトを忘れないタモリがますます好ましく映った。
「京都発見!」というタイトルがついているイベントなので、タモリが京都の話をするのかなと思っていたが、「ブラタモリ」とNHKの話は出て来たものの、京都の話は特になし。タモリ、予定調和がきっと嫌いなのだろうなあとナットクし、その代わり、(最近の)NHKはすごい。どんどん強気になっている。あの局が強気になったら大変なことになる。というような感想を聞く事ができたのでよしとする。予定調和は嫌いだろうが、「ブラタモリ」の宣伝をさりげなく挟み込む巧さである。
トークの最後は、オーボエ奏者の茂木大輔(山下いわく「クラシック界のタモリ」)も参加してのアドリブセッション。山下ピアノ、広上ピアニカ、茂木オーボエで、タモリはスキャット担当。
山下は「(ミュージシャンでも)ジャズの基本であるブルースを知らない。(その点、ブルースを知っている)タモリはいかに偉大か」というようなことを言ってタモリを讃えていた。そのタモリはスキャットが興に乗ってくると、顔や耳が赤くなっていき、いつも低体温のイメージと少し違う部分をかいま見せた。
これぞ、生タモリならではの感動。

休憩後は、演奏。
バーンスタイン「ウエスト・サイド・ストーリー」セレクションから
「アイ・フィール・プリティ」〜「マリア」〜「クール」〜「アメリカ」
バーンスタイン「ウエスト・サイド・ストーリー」から「シンフォニック・ダンス」第4曲「マンボ」
アルヴェーン「祝典序曲op.25」
グレン・ミラー・メドレー
「真珠の首飾り」〜「タキシード・ジャンクション」〜「ペンシルバニア6-5000」〜「リトル・ブラウン・ジャグ」
デューク・エリントン「A列車で行こう」
ガーシュウィン「ラプソディー・イン・ブルー」
と有名な曲ばかり。「発見!クラシック」だから、初心者向けの選曲なのだろう。
タモリは、客席中央の通路の前の列に座って聴いていた(おそらく15列13番)。
アンコール「Swing」では、再びスキャット参加し、また顔を紅潮させていた。

はじめての生タモリ。ええもん見たなあ〜と外に出たら、開演前はどしゃぶりだったのに、空はすっかり青々していた。これもタモリマジックか。

このイベントは日本唯一の自治体直営オーケストラとして創立して、来年60周年を迎える京都市交響楽団が春と夏に年に2回、平日の昼間に行う企画。
チケット代は4000円〜2000円とリーズナブルなので、ふだんクラシックに馴染みのない方には格好の機会だ。次回のゲストは茂木健一郎。
(木俣冬)