「災害弱者」
介護受入れ先少なく、お年寄りは帰島困難

【ライブドア・ニュース 30日 東京】 ─ 昨年、台風や地震などの自然災害が立て続けに日本各地を襲った。災害情報へのアクセス難や、不慣れな避難所生活などで、病人や高齢者、障害者、子ども、妊婦の多くが「災害弱者」になってしまうケースが相次いだ。各地で「災害弱者」の視点から、対策を見直す動きがあるが、三宅島の場合は。島への想いと生活への不安が入り混じるある70代の女性はこう打ち明けた。「行政から『自己責任で帰島』と言われると、年寄りは帰りにくいですよ。見捨てられた感じがする・・・」。

「見捨てられた感じ」

 島の平均年齢は、04年1月時点で51歳。3人に1人が65歳以上と、高齢者の村だ。介護認定を受けている住民が270人で、その4割近くが寝たきり状態と、介護が必要な人々だ。島内の特別養護老人ホームの再開見通しは立たず、老人介護への態勢も当面はデイケアといった軽度なものに限られる。また、重い病気に対応できる大きな病院はない。

 村は、寝たきり状況の住民を都内での療養環境に留め、帰島を自粛させる方針だ。また、寝たきりの老人を残して帰島するなどできない家族も多い。帰りたくても帰れない村民は、村の「帰島宣言」をどう受け取ればとよいのか戸惑いを隠せない。

村民どうしで支える

 一方、村民どうしで自発的に支え合う動きもある。東京・江戸川区の公営住宅には85世帯、153人が避難生活を送り、高齢者の夫婦や一人暮らしも少なくない。避難する高齢者の多くが、都心の複雑な交通網に戸惑い、メディアが流す島の現状や支援についての断片的な情報に悩まされたという。

 江戸川区で避難生活を送る飯倉則子さんもその一人。飯倉さんは、近所の高齢者を一軒ずつ訪ねる介護に加え、村役場から発信される情報を把握し、わかりやすく状況説明するボランティアにも励んだ。活動を機に取得した福祉系の資格は4つ、活動の協力者も増えた。「私はIターン組で、30年間島の人にお世話になった。恩返しのつもり」。避難解除後も、都内に残り、帰れない高齢者の支援にあたる。

高齢者6割「帰りたい」

 村の意向調査で「火山ガスのリスクを受容して帰島する」と選択した70代,80代のお年寄りは、6割を超えた。慣れ親しんだ島の中で暮らしたいのが本音。民宿を営んでいた木村和江さんは、「東京はせかせかしているし、四季がないから、島の人間にはつらいですよ。島で元気だったのに、避難後に亡くなった人も多い。島に帰らせてあげたかった」と口にした。帰りたくても帰れない高齢者の避難生活は、避難解除後もつづく。【了】

ライブドア・ニュース 常井健一記者

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