光った投手陣の健闘とスモールベースボール

 侍ジャパンが初戦から3連勝し、24年ぶりの勝ち越しで終えた日米野球。2006年以来の開催となったこのシリーズは、豪華なメンバーが来日したMLB選抜相手に、侍ジャパンがどんな戦いを見せてくれるか注目が集まっていた。

 侍ジャパンが勝ち越しで終えられた要因はどこにあるのか。スポーツコメンテーターの飯田哲也氏に、シリーズを振り返ってもらった。

「まず全体的な印象ですが、お互いに投手陣がよく投げて、引き締まった試合展開が多くなりましたね。特に侍ジャパンは、日本らしいスモールベースボールを実行し、投手陣が素晴らしい活躍を見せてくれました」

 今回の日米野球は、初戦の前田健太とシューメーカー、第3戦の則本、第4戦のカプアーノなど、投手陣の奮闘が光った。侍ジャパンは第3戦で則本、西、牧田、西野の継投で、歴史的なノーヒット・ノーランを達成した。

「野球ではどんな試合でも言えることですが、よい投手がしっかり調整してよい投球をすれば、打線がヒットを連ねていくことは簡単なことではありません。そういう意味で、侍ジャパンもMLB選抜も、真剣に試合へ臨んだことの表れだと思います。その中でも、侍ジャパンの投手陣は、見事な内容を見せてくれました。

 大会前から話していましたが、今回の侍ジャパンはよいメンバーが揃っています。前田、金子、則本、大谷、藤浪など先発投手陣は力がありますし、長打力はそれほどでもありませんが、打線も効果的な攻撃ができる選手が揃っています。守備に関しては、相当レベルが高いと思います。

 小久保監督は、そうしたチームの特徴づけを行い、その特徴を生かした戦い方を志向したことで、今回の結果につなげられたのではないでしょうか」

 持ち前の投手力、ディフェンス力を生かした侍ジャパンが、MLB打線をしっかりと抑え込み、効率的な攻撃で相手を上回った。そうした面で、自らの特徴を捉えながら、上手く戦えたといえるだろう。ただ反面、第4戦、第5戦ではチャンスを作れず、2試合で2得点に終わっている。

侍ジャパンの目指す方向性は間違っていない

「MLB選抜は、日本へ来日して間もなかったので、なかなかエンジンがかからなかった面はあると思います。第4戦、第5戦ではある程度持ち直して、打線も活発になりましたし、投手陣も本来の力を発揮してきました。

 ただどちらにしても、実戦から離れると打撃面での試合勘は失われてしまいがちですし、打線が湿ってしまうのは仕方のない部分でもあります。そこからも言えるのは、侍ジャパンが目指している戦い方は、正しい方向性にあると思いますね」

 MLB選抜は侍ジャパンに勝ち越しこそ許したものの、局面では圧倒的なパワー、スピードを見せる場面も多かった。そんな中で、飯田氏は“小兵”ホセ・アルテューベを最も気になった選手として挙げた。

「ホセ・アルテューベはいいですね。身長は170センチ弱と、MLB選抜に入ると驚くほど小柄ですし、日本球界でも小さい部類に入ります。メジャーの選手たちの多くは、豪快なスイングと力強い打撃で我々に驚きを与えますが、アルテューベは違った驚きを与えてくれました。

 シュアな打撃、必要とあれば右方向へおっつけヒットを打ち、積極的にどんどん走ってくる。MLB選抜の中では貴重な存在ですし、彼のような選手がいると、そのほかの選手がより引き立つことになり、相乗効果が出てきますよね。

 何より、あの体のサイズで、MLBでプレーできていることが素晴らしいです」

 アルテューベは今季、アメリカン・リーグで首位打者と盗塁王の2冠に輝いた。日本人選手と変わらぬ体格でありながら、気の利いたプレーでメジャーリーグを席巻している。アルテューベのプレーには、様々なヒントが隠されていそうだ。