『週刊サッカーダイジェスト』の人気コーナー「セルジオ越後の天国と地獄」をサッカーダイジェストWebで公開中!
 
※週刊サッカーダイジェスト11.25号(11月11日発売号)より
 
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 11月14日のホンジュラス戦、18日のオーストラリア戦に臨む日本代表23人が11月5日に発表された。そのリストを見て、僕は一瞬、錯覚を起こしてしまったよ。「あれ、監督はザッケローニだったっけ?」ってね。
 
 今回は、遠藤、今野、長谷部、内田らブラジル・ワールドカップに出場した選手たちがごそっと復帰している。26歳の内田はまだしも、残りの3人は軒並み30代で、遠藤に至ってはもうすぐ35歳だ。もちろん、サッカーに年齢は関係ない。だけど、4年後のロシア・ワールドカップに向けて、フレッシュな選手たちを試していく、というのが当初の方針ではなかったのかな。
 
 9月には皆川や坂井といった所属クラブで確固たる地位を得ていない選手を呼んで、ザッケローニ体制からの変化を示していたのに、今回は初招集の選手がひとりもいない。豊田や乾が招集されたけど、彼らはザッケローニ体制ですでに何試合か出場経験を積んだ選手たち。アギーレ監督はオリジナリティーを発揮することを早くも放棄してしまったようだ。となると、これまでの4試合は一体なんだったのか。選考は早くもブレブレ、一貫性が見られない。
 
 先月は、国外でブラジルと戦えるという貴重な機会に、Jリーグでプレーする国際経験の浅い選手ばかりを起用した。今回は相手との実力差がほとんどなく、国内でのゲームだから、若い選手を試す格好の機会なのに、ベテランを呼び戻した。選考や采配が行き当たりばったりで、ワールドカップ後の6試合を計画的かつ有効に使えているとは思えない。
 
 これまでの戦績は1勝1分け2敗。その1勝もコンディション不良のジャマイカ相手に凡戦を演じ、1-0の辛勝だった。そのため、アギーレ監督は、目前に迫ったアジアカップに対して危機感を募らせているんじゃないかな。遠藤、今野、長谷部、内田らはテストが必要な選手たちではなく、計算の立つ選手たちだ。アジアカップで彼らの力を借りようとしているのは明らかだね。
 
 若手に経験を積ませるのではなく、30代のベテランを連れて行くのであれば、アジアカップでは優勝以外に許されない。どんな結果になろうとも、“エクスキューズ”はないよ。アジア王者の座を死守することが、唯一のノルマになる。
 
 ところが、日本協会から、アジアカップに対するノルマは、まったく聞こえてこない。9月のアジア大会の時もそうだったけど、なぜノルマを設定しないのか。目の前に高いハードルがあるからこそ、危機感を募らせ、最大限の努力をするもの。それはサッカーに限らず、受験でも仕事でも同じだ。
 
 振り返ってみれば、ワールドカップで結果を残せた時はノルマが設定されたり、厳しいプレッシャーに晒されていた。トルシエ監督は常に解任を突きつけられていたし、岡田監督もメディアやファンから厳しい目が向けられていた。そうした状況だったから、チームに緊迫感や危機感が生まれ、撥ね除ける強さが備わったんだ。だから、今回もしっかりとノルマを設けるべきだ。
 
 新聞報道によれば、日本協会内にアギーレ監督の指導に対する疑念が浮き上がっていて、11月の2試合の結果いかんでは、アギーレ監督に事情を説明させる方針のようだけど、これも酷い話だよ。「こんなメンバーで、こんなサッカーをしたい」と口で言うのは簡単なこと。重要なのはピッチで何を示すかだ。それに、改めて事情を説明させるなら、普段はいったいどんなコミュニケーションを取っているんだろうか。