京都サンガU−18に所属する奥川が、リバプールからオファーを受けているという。彼は先日のU−19AFC選手権に出場した年代別の代表選手だが、Jリーグには1試合も出場していない。獲得後は期限付きで他クラブへ移籍させることを示唆しているように、リバプールにとっては先行投資としてのオファーだ。
Jリーグを経由せずに海外クラブからオファーを受けるケースは、今後も増えていくだろう。選手の可能性を拡げる意味では好ましいことだが、喜んでばかりもいられない。
現在のU−19代表ということは、奥川はリオ五輪出場を目ざす世代のひとりである。その彼が、海外クラブへ移籍することになったら。
五輪予選に出場するのが、難しくなるかもしれない。
リオ五輪の出場権はU−22AFC選手権によって争われ、現在のところは2016年1月に開催される予定だ。奥川がリバプールと契約を結んだら、かなりの確率でクラブのスケジュールと重なる。プレミアや1部の他クラブへ期限付き移籍していたとしても、戦力として認められていればクラブは手放したくないだろう。
先のアジア大会で、リオ五輪世代のU−21日本代表はベスト8に終わった。23歳以下でメンバーを編成し、オーバーエイジを加えたチームもあったから、この結果をそのまま日本の実力と見なすのは早計だ。日本が負けたイラクと韓国は、まさに23歳以下プラスオーバーエイジの編成だった。
とはいえ、02年大会は同じ条件下で準優勝し、4年前は金メダルに輝いている。年代別代表の戦いで東南アジア勢とウズベキスタンが存在感を増している現状を踏まえると、リオ五輪出場をめぐる争いはこれまで以上に熾烈となりそうだ。
U−22AFC選手権はセントラル開催の短期決戦だ。ひとつの敗戦が命取りになりかねない。事前の準備がこれまで以上に重みを持ち、そのなかにはベストメンバーを組めるかどうかも含まれている。
リオ五輪予選を賭けた戦いへ向けては、久保裕也(ヤングボーイズ)や丸岡満(ドルトムント)らの招集も検討されるはずだ。チームを率いる手倉森誠監督にしてみれば、一度はテストをしてみたい人材だろう。
アジアの年代別選手権は、FIFAの定める国際Aマッチディに開催されない。このため、クラブ側の了承を得られなければ選手を招集できない。
所属クラブで定位置をつかむことが選手のためになり、ひいては代表の利益にもつながるという立場から、これまでは海外クラブ所属選手が年代別代表に加わるタイミングは限定的だった。ロンドン五輪最終予選にボルシアMG(当時)の大津佑樹を招集できたのも、クラブで出場機会が少ないことが後押しした。もし彼がレギュラーポジションをつかんでいたら、チームを離れることは許されなかっただろう。
年代別代表チームは、短期間で驚くほどの変貌を遂げる。先のU−19選手権で来年のU−20W杯の出場権をつかんだカタール、北朝鮮、ウズベキスタン、ミャンマーらは、リオ五輪予選で強力なライバルとなるだろう。この年代で最強と呼ばれるイラク、アジア大会金メダルの韓国、オーストラリアらも、当然ながらマークしなければいけない。「五輪は出場できるもの」とか「出場するのは当然」といった認識が固まっているが、予選の厳しさは増すばかりだ。
リオ五輪を目ざす世代には、所属クラブで定位置争いに絡んでいる選手が多い。長身のセンターバックが揃っているのは、この世代の特色だ。ポテンシャルはある。
だからといって、過去の強化プランをなぞるだけでは物足りない。これまで以上の準備をしなければリオに到達できないという認識から、準備を進めていくべきである。
PCMAX
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