[画像] SNSはブラックアルバイトの救いになるのか? Twitterで呼びかけられたストライキの行方は?

Twitterを中心に、「29日にアルバイトを休もう」という呼びかけが起こった。対象は、大手牛丼チェーン店だ。5月29日に一斉にアルバイトを休んでストライキを行おうというものだ。「#すき家ストライキ」というハッシュタグで広まった。ハッシュタグ絞り込んでみると、当事者であるアルバイトの人たちというより、「一体どうなるのか?」と、今回の動向に注目するユーザーのコメントがほとんどだ。野次馬的な人も多いが、SNSから発せられた投稿により、実際にストライキが行われるかどうか、今回の呼びかけに注目する人が多かったようだ。果たして29日にストライキは行われたのか?

●負のスパイラルを招くブラックな仕事環境
ブラック企業やブラックアルバイトなどという言葉を耳にするようになって久しい。賃上げ要求や労働環境の改善要求は、労働組合(労組)を通して行われるものだが、そもそも労組が存在し、機能しているのならブラック企業とはならないはずだ。アルバイトやフリーター、派遣社員という雇用形態の人は、労組の恩恵を受けられないケースが多い。(※個人単位で加入できる労組もある)、不満を持っていても、企業に対抗する力・手段を持っていない。声を上げることはできず、辞めるか、ガマンという二択しかない状況に追い込まれている。それが、現状だ。

すき家は、アルバイトスタッフが主力で作業負担も大きいが、必ずしもブラック企業といわれる企業ではない。他店との競争で導入した新メニューにより、アルバイトスタッフの労働負荷が上昇し、労働環境の悪化から離職者の増加といった状況を生み出したようだ。結果として一部店舗で人手不足から閉店などの影響が発生したとみられている。

アルバイトなど非正規雇用者の依存度が高い業種では市場での競争も激しい。すき家に限らず、ちょっとした状況変化によっては負のスパイラルで労働環境が悪化する可能性があるとも言えるだろう。

●今回のストライキは、一般的なストライキではない
今回のSNSでの呼びかけは、労組の動きと似ているが、労組の活動とは大きく異なる。シュプレヒコールをあげたりデモ行進をしたりといった団体行動ではない。労組のストライキは組織化され、一致団結して経営陣と交渉を行う反面、組合員は参加強制などの義務も発生する。こうしたストライキと比べ、今回の呼びかけには、強制も、組織化もなく、個人の意思で、自分の環境改善にむけて、賛同により協調した行動という点が大きく異なる。また、意思や目的が示されていないため、ソーシャルネットワークで投稿が拡散されているだけのような印象も強い。現状の不満を表現するだけで、「どのように改善するのか」といった着地点もみえず、曖昧なままだ。

●当日はどうだったのか
筆者が訪れた神奈川と東京の店舗では、通常通りの営業だった。また、すき家を運営するゼンショー(株)広報によると、「ストライキを行った人は1名いましたが、ストライキによる閉店等は起きていない」とのこと。Twitter上にユーザーがアップしている各店舗の写真を見ると、営業時間の短縮や、営業の一時停止の貼り紙がされているが、これらはストライキ呼びかけの影響との関連性は薄く、それ以前からの人手不足問題が要因のようだ。

●SNSはブラックアルバイトの救いになるのか?
労組を介さず、バイトを休もうという呼びかけやストライキを促す今回のSNSの行動には、賛否もあるだろうが、SNSから自分たちの環境改善を行おうという動きが生まれてきたことは、インターネットやソーシャルサービスが浸透してきた時代を反映していると感じた。

今回、実際には一斉ストライキは起こらず、ストライキによる店舗休業も起こらず、実生活に大きな影響はなかった。そして何も変わらなかったのかもしれない。しかし、辞めたくても辞められず、改善要求もできない立場の非正規労働者は現実には、今も存在している。
SNSには、そうした労働者が企業に改善を働きかける救いのツールとなる可能性があるのかもしれない。