このコーナーでは、猫に関するお悩みに獣医師の山本先生がお答えします。今日のお悩みは、「家に帰ったらうちの白猫が黒猫になってました」です。

○質問

28歳女性です。家に帰ったらうちの白猫が黒猫になっていました。

趣味で書道をしているのですが、昨日書道の道具をすべてお風呂場で洗いました。なかなか墨などの汚れが落ちなかったので、バスタブに深さ15センチほどのお湯を入れて道具をひたしておきました。

すっかりそれを忘れて会社に行き、帰ってきたらうちの白い猫が真っ黒な黒猫になってました。正確には、首から上が真っ白な白猫で、首から下がすべてきれいに黒猫になってました。どうやらバスタブのそばに置いてあった墨汁を湯船の中にこぼしたあげく、うちの子はお風呂大好きなのでのんびりと浸かっていたようです。

体に悪いかと思い、あわてて獣医さんに見せたら先生はツボにはまったようで呼吸ができなくなるほど爆笑してらっしゃいました。部屋の隅で3分くらいピクピクけいれんしてらっしゃいました。あと、とりあえずうちの子の健康が害されたということはないようです。

でも顔が白くて体が黒いままだとなんだかかわいそうです。シャンプーを二回したのですがまったく落ちません。どうすればよいでしょうか?何かよいアイディアがあったら教えて下さい。

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○山本先生からの回答

白猫が黒猫になっていたとはさぞかし驚かれたことでしょう。動物病院で働いていると様々な猫ちゃんがきます。よくあるのはトリモチに引っかかって身動きがとれなくなっている猫です。トリモチは対処法が広く知られているのですぐに綺麗にできますが、墨汁まみれになった猫はみたことがありません。しかも白猫ということで、かかりつけの獣医さんもツボに入って悶絶してしまったのでしょう。

墨汁の落とし方ですが、通常のシャンプーだとやはり難しいでしょう。洋服についた墨汁を落とすときは、乾燥する前に固形石鹸でこするようです。一度乾燥した墨の染みはクリーニングに出してプロの方がやっても落ちないことが多いとか。

白毛の犬や猫専用のホワイトシャンプーというものもありますが、墨を落とす程の効果はないでしょう。漂白剤を含む効果の強いホワイトシャンプーは皮膚のことを考えると避けた方が良いです。

墨汁が持つ猫に対する毒性ですが、墨汁の中に乾燥防止剤として、エチレングリコールが含まれていることがあります。このエチレングリコールは猫にとって非常に危険な成分です。猫が墨を飲んでしまったときは動物病院に相談しましょう。

綺麗な白が黒になってしまって人間からすると可哀想ですが、おそらくその猫ちゃん自身は全く気にしていないと思います。ちょっと体が墨臭いな……程度にしか思ってないでしょう。

既に2回シャンプーをしているということで、あらかた墨汁は落ちていると思います。毛に残っている微量の墨汁を舐めてしまっても害は少ないですし、無理に落とさなくても良いのではないでしょうか。

また裏技として、首から下の毛を刈ってしまう方法もあります。長毛の猫が毛玉まみれになったときに顔とシッポの毛を残して全部の毛を刈ることがあります。ライオンカットと呼んでいますが、意外とかっこいいです。毛は短毛であれば3ヶ月ぐらいで生えてきます。ただし毛を刈ることに抵抗がある飼い主さんも多いです。一度ライオンカットの完成写真を見てみてから、かかりつけの獣医さんと相談してみて下さい。

■著者プロフィール山本宗伸職業は獣医師。猫の病院「Syu Syu CAT Clinic」で副院長として診療にあたっています。医学的な部分はもちろん、それ以外の猫に関する疑問にもわかりやすくお答えします。猫にまつわる身近な謎を掘り下げる猫ブログ「nekopedia」も時々更新。

(山本宗伸)