11月16日のオランダ戦をまえに集合したチームは、選手だけのミーティングを開く。

　セルビアとベラルーシに連敗した10月シリーズの反省点があげられ、話し合いは「チャレンジ」をキーワードに着地点へ向かう。「前線からプレッシャーをかけていく自分たちのスタイルを、強豪相手にも出していこう」という思いでまとまった。

　ところが、オランダ戦もここ最近ではお馴染みの展開となる。序盤のチャンスを浪費し、13分にミス絡みで先制点を許す。39分にはロッベンに、得意の形から追加点を喫した。

　違ったのはここからである。前半終了間際の44分、長谷部誠の持ち出しから大迫勇也が追撃弾をあげたのだ。

　香川真司と遠藤保仁が出場した後半は、ゲームの主導権を掌握する。オランダがナイジェル・デヨングを交代させたことも強力な後押しとなり、60分に流れるようなパスワークから本田圭佑が同点ゴールをゲットした。77分の決定機を柿谷曜一朗が決めていれば、勝利をつかむこともできただろう。

　このゲームには正と負の現実が内在する。

　プラス材料は攻撃にある。足元へのパスが多かった10月の２試合を教訓として、攻撃のアプローチが幅広くなったのだ。岡崎が説明する。

「足元でつなごうとすることをやったから、じゃあ次は裏を狙わないと相手を下げさせられないというのも分かった。それを考えたら、セルビアとベラルーシの試合はホントに大事だったと思う」

　課題はこれまでと同じである。ここでも岡崎のコメントが分かりやすい。

「前半の最初に先制できなかったことと、逆に失点してしまったこと。それはすごい大事だと。３対２にできるチャンスはあったにせよ、同点にするのもひと苦労だったと思うし。自分たちが主導権を握りたかったら、先制させちゃいけない。そこを次は重要視したいと思います」

　長谷部は「原点に返った」と表現した。

「今日は選手全員が裏への意識であったり、サイドの幅であったりとか、そういうところをすごく意識していた。守備の部分でもすごく連動していたし。選手全員が同じ方向を向く、同じマインドでプレーするというのがすごく大事だったし。それができていたと思う。それは監督がずっといっていたことで。まあ正直、原点に返ったという感じですけどね」

　続けて質問を受けたキャプテンは、直前の発言を修正した。岡崎が語った感覚を、彼も共有している。

「原点に返ったという言い方がふさわしいかどうかは分からないですけど、自分たちが目ざす方向へプラスアルファを色々と足していくなかで、芯となるものをちょっとおろそかにしていたというのはあって。もちろん、これからもプラスアルファはしていくんですけど、相手の裏ばかりだけじゃなく細かくつないでのチャンスも何回もあったし。そういうところを表現していけば、相手も的を絞りづらいところはあると思うので」

　３日後のベルギー戦には何を求めるのか。長谷部はほとんど間を置かずに答える。

「とにかく、継続していくことでしょう。ベルギーもコロンビアに負けているし、次の試合では絶対に負けられないだろうし」

　チームの士気が高まったなかで迎えたベルギー戦は、いきなり難しい立場に追い詰められる。15分、敵陣でのボールロストから１本のパスで右サイドを突かれる。裏を取られた吉田麻也は完全に振り切られたわけではなかったものの、ＧＫ川島永嗣がペナルティエリアから飛び出す。だが、ルカクを止めることはできず、ゴール前へ折り返されてしまう。

　ここでもうひとつミスが出た。背後から迫るミララスの気配を、酒井高徳は感じていなかった。大歓声が降り注ぐピッチ上で、川島は両手で頭を抱えた。オランダ戦とほとんど同じ時間帯に、先制点を許してしまったのである。

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