涌井秀章投手はなぜここまで長い間不振に苦しんでいるのか。その原因をライオンズの投手コーチたちはどこまで把握しているのか。もちろん涌井投手は本来エースであるべき投手だ。今季の年俸2億2千万円(推定)という金額も、ベテラン石井一久投手の1億9千万円を除けば、岸孝之投手の1億5千万円に7千万円もの大差を付ける金額となる。年俸という数字だけで判断するならば、涌井投手はもはや一流中の一流投手だ。それは過去の実績からも十分に証明されている。パーソナル投手コーチを職業とする筆者は、野球指導者には様々な種類の人がいることを良く知っている。例えばプロ野球の場合、投手コーチが下手に一流投手を指導してしまい、その投手を壊してしまうことを恐れ、上辺だけの指導しかしようとしないコーチが存在する。これはもちろん日本球界に限らず、アメリカでも同じことが言える。
1軍の杉本正コーチ、石井貴コーチ、2軍の横田久則コーチ、橋本武広コーチがそうであるとは言わない。あくまでもそういうコーチも中にはいる、という話だ。上述したような三流指導者は、大概は人脈のみで野球界に長くいるコーチたちだ。例えば指導力はなくても人気があったり、顔が広かったり、優しいから選手に好かれていたり。そのようなコーチがプロ球界には国を問わず多いということは事実だ。だが筆者は、ライオンズの投手コーチたちがそうであるとは決して思いたくはないし、思ってもいない。指導力があるからこそ招聘され、職を務めていると信じている。だが投手コーチが4人もいて、エースをこれだけ長い間再生させることができないというのは、鈴木葉留彦球団本部長としては軽視すべきではないだろう。
さて、ここまで話したところでようやく本題へと入っていきたい。好調時の涌井投手にあって、現時点での涌井投手にないもの、それは我々プロの目から見れば明らかだ。筆者はパーソナル投手コーチに転職してまだ4年目ではあるが、それには今よりかなり以前から気が付いていた。筆者が気付いているのだから、ライオンズの投手コーチ陣が気付いていないということは考えにくい。ゲームレビューなどでも度々書いていることではあるが、今回は本腰を入れてそれを書いてみたいと思う。
涌井投手は本来スモーキーと呼ばれるタイプの投手だ。つまり球の出所が打者から非常に見難く、煙の中から突然ボールが飛んでくるように見える投げ方をしている。筆者の個人的な意見を言わせてもらえるならば、今、涌井投手を再生できるプロ野球出身の投手コーチでは吉井理人氏だと考えている。その根拠は吉井氏の著書を読んだり、指導スタイル、これまでの経験や理論知識などを見聞きしてのものだ。さらに言えば現役時代の吉井投手の投げ方は、まさにスモーキーであり、涌井投手とはまったく同じタイプに分類することができる。だからこそ筆者は、吉井氏ならば涌井投手を再生できると考えているのだ。
涌井投手の話をする時にはよく使うスモーキーという言葉だが、しかし今の涌井投手の投げ方はスモーキーではないのだ。ボールの出所が、打者から比較的よく見える状態になってしまっている。投球フォームそのものにほとんど大差はない。例えば甲子園に出ていたり、大学で本格的に野球をやっていた野球経験者であっても、映像分析に携わった経験がなければ気付かないような違いだ。それほど微々たる違いではあるのだが、ピッチングメカニクスという観点から涌井投手を見ると、好調時と今とでは大きな差があるのだ。
ライオンズの首脳陣は涌井投手をリリーフに回すことにより、腕を強く振らせるというコーチング手法を取った。しかし今だからこそ言うのだが、このコーチングは涌井投手に対しては間違いだったと筆者は考えている。その理由は、腕の筋力利用の割合を強めて腕を強く振ろうとすると、慣性モーメントが大きくなってしまうのだ。分かりやすく言えば遠心力が強くなるということで、こうなると確実に腕は遠回りしてしまう。腕が遠回りして振られるということは、右手に握ったボールを胴体の後ろ側に隠すことができなくなり、ボールの出所が打者からよく見えるようになってしまう。そのために例え150kmのボールを投げたとしても、簡単に打者に対応されてしまうのだ。
1軍の杉本正コーチ、石井貴コーチ、2軍の横田久則コーチ、橋本武広コーチがそうであるとは言わない。あくまでもそういうコーチも中にはいる、という話だ。上述したような三流指導者は、大概は人脈のみで野球界に長くいるコーチたちだ。例えば指導力はなくても人気があったり、顔が広かったり、優しいから選手に好かれていたり。そのようなコーチがプロ球界には国を問わず多いということは事実だ。だが筆者は、ライオンズの投手コーチたちがそうであるとは決して思いたくはないし、思ってもいない。指導力があるからこそ招聘され、職を務めていると信じている。だが投手コーチが4人もいて、エースをこれだけ長い間再生させることができないというのは、鈴木葉留彦球団本部長としては軽視すべきではないだろう。
さて、ここまで話したところでようやく本題へと入っていきたい。好調時の涌井投手にあって、現時点での涌井投手にないもの、それは我々プロの目から見れば明らかだ。筆者はパーソナル投手コーチに転職してまだ4年目ではあるが、それには今よりかなり以前から気が付いていた。筆者が気付いているのだから、ライオンズの投手コーチ陣が気付いていないということは考えにくい。ゲームレビューなどでも度々書いていることではあるが、今回は本腰を入れてそれを書いてみたいと思う。
涌井投手は本来スモーキーと呼ばれるタイプの投手だ。つまり球の出所が打者から非常に見難く、煙の中から突然ボールが飛んでくるように見える投げ方をしている。筆者の個人的な意見を言わせてもらえるならば、今、涌井投手を再生できるプロ野球出身の投手コーチでは吉井理人氏だと考えている。その根拠は吉井氏の著書を読んだり、指導スタイル、これまでの経験や理論知識などを見聞きしてのものだ。さらに言えば現役時代の吉井投手の投げ方は、まさにスモーキーであり、涌井投手とはまったく同じタイプに分類することができる。だからこそ筆者は、吉井氏ならば涌井投手を再生できると考えているのだ。
涌井投手の話をする時にはよく使うスモーキーという言葉だが、しかし今の涌井投手の投げ方はスモーキーではないのだ。ボールの出所が、打者から比較的よく見える状態になってしまっている。投球フォームそのものにほとんど大差はない。例えば甲子園に出ていたり、大学で本格的に野球をやっていた野球経験者であっても、映像分析に携わった経験がなければ気付かないような違いだ。それほど微々たる違いではあるのだが、ピッチングメカニクスという観点から涌井投手を見ると、好調時と今とでは大きな差があるのだ。
ライオンズの首脳陣は涌井投手をリリーフに回すことにより、腕を強く振らせるというコーチング手法を取った。しかし今だからこそ言うのだが、このコーチングは涌井投手に対しては間違いだったと筆者は考えている。その理由は、腕の筋力利用の割合を強めて腕を強く振ろうとすると、慣性モーメントが大きくなってしまうのだ。分かりやすく言えば遠心力が強くなるということで、こうなると確実に腕は遠回りしてしまう。腕が遠回りして振られるということは、右手に握ったボールを胴体の後ろ側に隠すことができなくなり、ボールの出所が打者からよく見えるようになってしまう。そのために例え150kmのボールを投げたとしても、簡単に打者に対応されてしまうのだ。
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