■FC東京の下部組織

ネットスラングとしてよく見かけるサッカー用語のひとつが「信頼の○○ブランド」だ。

たとえばガンバ大阪はブラジル人フォワードを中東へ輸出して「信頼のガンバブランド」と言われ、セレッソ大阪はブンデスリーガに技巧派を送り込んで「信頼のセレッソブランド」と言われ、京都サンガF.C.はドゥトラや中村充孝を鹿島アントラーズに供出しては「信頼の麿ブランド」と言われる。

関西商人が多いのは偶然の一致だろうか。

これらはトップレベルでの話だが、もちろんプロの世界に若者を送り出す下部組織も、お稽古事ではないがブランド化している。東京ではやはりFC東京U-18と東京ヴェルディユースが筆頭格だ。

14日、李忠成がFC東京退団に際しての囲み取材に応じた。そのときに彼は「FC東京の下部組織から多くの(プロ)選手を輩出している」と言っていた。

たしかにそのとおりだが、問題は購入先である。

大学経由と昇格を合わせて、プロキャリアのはじめにFC東京U-18からFC東京トップチームへと入団した選手は以下のようになっている。

【FC東京】
馬場憂太、尾亦弘友希、梶山陽平、李忠成、呉章銀(オ ジャンウン)、吉本一謙、権田修一、森村昴太、阿部伸行(※流通経済大学経由)、大竹洋平、廣永遼太郎、椋原健太、阿部巧、重松健太郎、平出涼、丸山祐市(※明治大学経由)、橋本拳人、三田啓貴(※明治大学経由)、野澤英之
※2012年に武藤嘉紀が特別指定でプレー。現在も慶應義塾大学に在学中

■その他のクラブへ進んだ選手

そのほかのJクラブはというと、やはり大学経由を含めてFC東京U-18から(U-15まで東京に在籍していてU-18に進まなかった選手は除く。ちなみにいまHonda FCで1トップを務めている伊賀貴一はFC東京U-15出身)プロに進んだ選手は、

【柏レイソル】
鎌田次郎(※流通経済大学経由)
【鹿島アントラーズ】
宮崎智彦(※流通経済大学経由)
【ヴァンフォーレ甲府】
井澤惇
【栃木SC】
斉藤雅也(※明治大学経由、一年めはJFL)
【京都サンガF.C.】
染谷悠太(※流通経済大学経由)
【水戸ホーリーホック】
村田翔(※中央大学経由)、常盤聡(※東京農業大学経由)、山村佑樹(※明治大学経由)、二瓶翼
【サガン鳥栖】
岡田翔平(※鹿屋体育大学経由)
【ファジアーノ岡山】
田中奏一(※慶應義塾大学経由)
【モンテディオ山形】
宮阪政樹(※明治大学経由)
【徳島ヴォルティス】
藤原広太朗(※立命館大学経由)
【ロアッソ熊本】
山崎侑輝(※鹿屋体育大学経由)
【松本山雅FC】
岩渕良太(※明治大学経由)
【ガイナーレ鳥取】
井上亮太(※鹿屋体育大学経由)
【FC岐阜】
平野又三(※日本体育大学経由)
※天野翔平が今季JFLに降格したFC町田ゼルビアに加入

と、なっている。
つまりFC東京へのトップ昇格と、大学経由で他クラブに加入しているケースが多い。FC東京U-18から他のJクラブにお買い上げいただいた選手は、井澤と二瓶のふたりだけである。大学なり、東京トップでの実績を評価されて他クラブに移籍するケースが大半だということを考えると、まだまだブランドとして確立しているとは言いきれないように思う。

もちろん下部組織の選手は自分のクラブでトップ昇格するのが筋なのだろうし、Jリーグの新人に占める大卒選手の割合が過半数である現場を考えれば、FC東京U-18はよくがんばっているほうだろう。

しかし大学を経由せずに他のJクラブに加入する選手が増えれば、育成機関としてのブランドヴァリューはさらに高まるだろう。大学を経由したなら、ベガルタ仙台でACLに出場している鎌田次郎のようにめざましい活躍をするに到ってほしい。

では今後、右肩上がりになっていくのかというと、そう世間は甘くない。