序盤は主導権を握られた。シンプルなロングボールをきっかけに守勢に立たされ、ケーヒルに冷や汗をかかされる。これまで何度も痛めつけられてきた男に、この日も守備陣が苦しめられる。
ここでチームを救ったのがＧＫ川島だ。観衆の声援をため息に変えた彼のプレーが、チームに落ち着きをもたらす。前半20分あたりで試合の流れを押し戻すと、そこから先はほぼ互角の展開へ持ち込んでいく。
０対０で迎えた55分、オーストラリアが退場者を出す。数的優位に立った日本は、65分にショートコーナーから栗原が先制弾を叩き出す。ところが70分、サウジアラビアのアルガムディ主審が、オーストラリアにＰＫを与える。敵将オジェックが「反則があったようには見えなかった」と話したプレーは、ホームタウン・デシジョンと言っていいものだった。
主審の独断専行ぶりはなおも続く。89分には栗原も退場となり、ロスタイムには本田が直接ＦＫを蹴らないうちに、試合終了のホイッスルが鳴り響く。
グループ最大のライバルと目される相手と、アウェイで引き分けたのである。結果は悪くない。ただ、決して多彩とは言えない相手の攻撃に苦しめられたのは、はっきりとした物足りなさを残した。長友は「世界で戦っていくには、このレベルで満足してはいけない」と話し、香川も「個人としてもチームとしても課題を残した」と振り返った。
６月シリーズを２勝１分けで終えた日本は、勝点７の首位で中断期間に入った。２引き分けのオーストラリアは、イラクと並んで勝点２にとどまっている。欧州のカレンダーに合わせて、代表チームはおよそ２か月のオフに入った。
（第４回に続く）
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