５月下旬にしては肌寒さが残る静岡・エコパスタジアムで、９か月ぶりの日本代表復帰を果たした選手がいた。３次予選の全試合を欠場した本田圭佑が、日本代表に帰ってきたのだ。

　ＦＩＦＡランキング１０９位のアゼルバイジャンを迎えたテストマッチは、６月３日開幕のワールドカップ最終予選へ向けたスパーリングの位置づけである。欧州各国リーグ終了後に実戦から離れている海外組には、試合勘を取り戻すための機会だ。
ただ、２月のウズベキスタン戦で苦杯をなめていたチームが、勝利を求めていたのは事実である。結果も内容も欲しい一戦だった。

　３次予選の停滞感を断ち切ったのは、背番号を「18」から「４」へ変えた本田だった。４−２−３−１のトップ下で攻撃のタクトをふるい、前半43分には香川の先制点につながるポストプレーを見せた。後半13分には岡崎の追加点をアシストする。自らも無回転のフリーキックを披露するなど、復活を強烈にアピールした。

「もう少し周りと噛み合えば、相手にとって危険なプレーの質と回数も増える。緊張感を持って試合に入ったつもりだけど、まだまだですね」

　自己採点は厳しいが、表情に険しさはない。

「まだまだこのチームはやれる。質を高めていかなきゃいけない部分は、今日の試合でも見えた。その質を高めていけば、３試合とも勝ちきれる」と語った。６月３日のオマーン戦、８日のヨルダン戦、11日のオーストラリア戦と、日本は６月にワールドカップ最終予選を３試合消化する。

　本田の復帰で「３の左」へ戻った香川も、悪くない感触をつかむ。自身の代表通算10得点目となった先制点について聞かれると、「すべてがイメージどおり」と振り返った。本田同様に「チームはもっと良くなる」と続け、「今回は時間をかけてチームを作れる機会。最終予選は雰囲気が違うし、しっかり練習を重ねていきたい」と、６月の３連戦を見据えた。

　チームはアゼルバイジャン戦の２日後から、欧州組だけで合宿をスタートさせる。国内組はＪリーグやＡＣＬを消化したのちに、順次合流していった。海外組を含めた主力選手が一週間強にわたって練習できるのは、11年11月以来だ。チーム内のコミュニケーションを高めつつ、初戦でぶつかるオマーン対策の時間も十分にある。「最終予選に大差で勝てるような甘い試合はない」（本田）という緊張感を抱きつつも、チームは手応えを深めていた。

　果たして日本は、オマーンを３対０で撃破する。前半11分の本田の先制点がチームを緊張感から解放し、後半に前田と岡崎が加点した。「４、５点は取れた。満足できない」と本田は話したが、ザックは「素晴らしい試合をしてくれた」と勝点３奪取を評価した。

　５日後のヨルダン戦では、攻撃の迫力と決定力をさらに高めた。前半27分に退場者を出した相手から、本田のハットトリックを含む大量６ゴールを略奪した。

　チームは翌日午前のチャーター機で、ブリスベンへ飛ぶ。オーストリアとのアウェイゲームへ臨むためだ。

「アウェイで勝てれば、この予選を有利に進めることができる。そういう意味ですごく大事な試合」

　試合を翌日に控えて、香川が引き締まった表情で答える。「勝ったらかなり大きい。いい形で３試合を締めくくりたい」と岡崎も話し、「勝てばかなり近づく」と長友も語気を強めた。何に近づくのかは、改めて確認するまでもなかった。

　アウェイゲームだが、条件は日本が上回る。日本がヨルダンを撃破したその日、オーストラリアは気温40度を越えるオマーンでアウェイゲームを戦っていた。ブリスベン到着も、日本が１日早い。

　ＦＩＦＡランキング23の日本に対して、オーストラリアは24位だ。地元紙は「アジア最強を決める一戦」と煽り、オーストラリアのホルガー・オジェック監督は「日本に勝利をプレゼントするつもりはない」と対抗心をあらわにする。

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