自民党が、2012年12月の衆院選の公約に「憲法改正により自衛隊を国防軍として位置づける」と掲げた。
脱原発や環太平洋経済連携協定(TPP)参加の是非が選挙の争点となるなか、尖閣諸島や竹島を巡る中韓両国との関係悪化で、外交と安全保障問題に一石を投じる「国防軍設置」への関心が高まり始めたようだ。自民・安倍晋三総裁に対し、さっそく野田佳彦首相が反論して党首同士の論争になりつつあるが、舌戦はさらにネットにも広がっている。
朝日や毎日がいっせいに取り上げる
11月21に発表された自民の公約には、外交・安全保障の項目で「集団的自衛権の行使を可能とする」「自衛隊の人員・装備・予算を拡充する」「憲法改正により自衛隊を国防軍に」と並ぶ。安倍総裁のカラーが色濃く反映されたようだ。自民は2012年4月28日に「日本国憲法改正草案」を発表したが、この中でも「平和主義を継承するとともに、自衛権を明記し、国防軍の保持を規定」と盛り込んでいる。
安倍総裁は公約の発表にあたって、「われわれは、できることしか書かない」と意気込んだ。
一方、他党は「国防軍」の提案に警戒感を強める。野田首相は11月23日、報道陣に対して「憲法9条の改正も含め国防軍を簡単につくれるのか」と指摘。公明党の山口那津男代表も、自衛隊を国防軍に改称する必要はないと否定的な立場を見せた。
「右に寄る自民・維新」――。11月24日付の朝日新聞朝刊は、核兵器のシミュレーションに関する発言をした日本維新の会・石原慎太郎代表と国防軍を提案した安倍総裁の動きを、こう紹介した。毎日新聞も同日の朝刊で、「国防軍巡り応酬」との見出しで、野田首相と安倍総裁の「批判合戦」を報じた。
安倍総裁は国防軍の設置に関して、憲法改正に必要な衆参両院の3分の2を確保して取り組む課題だとしている。一方の野田首相は24日、安倍総裁との党首討論の実現に「私はいつでもいい」と意欲を示した。今のところ他党の賛同が広がらない国防軍を引き合いに、攻勢を強める考えなのかもしれない。
ヤフーのネット調査では「賛成」が圧倒的
ツイッター上でも、国防軍に関しての論争が始まった。自民党の片山さつき参院議員は、日本維新の会・橋下徹代表代行がテレビ番組で国防軍について「名前を変えるのには反対だ」と発言したとの報道を引用し、「維新の安全保障政策はふらふら!」とバッサリ。さらに「多くの選挙区で自民を脅かしつつある維新ですがこれでは話にならん!」と突き放してみせたのだ。
橋下代表代行も黙ってはいない。すぐさま「国防軍と名称を変えることが重要なんてナンセンス。自衛隊をここまで弱体化したのは、片山さんご出身の財務省。そしてそれを追認した自民党」と反撃した。さらに「日本維新の会は威勢の良いことを言うことはしない。合理的に考える。『国防軍』と名称を変えるには憲法改正の3分の2は得られないだろう」と断じた。
ヤフーがインターネット利用者に対して、「国防軍の保持」の賛否を調査したところ、11月24日16時現在で「賛成」が72%と、「反対」の25%を大きく上回った。賛成派は「いい加減、自衛隊を便利屋扱いするな」「自国を守るためにも大いに賛成」といったコメントで、反対派の意見は「十分な自衛能力があるのだから軍にする必要はない」「今更、何かメリットでもあるのか」といったものが見られた。