「うちの本棚」、今回ご紹介するのはジョージ秋山、初期の代表作のひとつ『ざんこくベビー』です。タイトルのインパクトも素晴らしい本作ではありますが、全エピソードを収録した完全版の単行本は未刊行であります。
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初期のジョージ秋山の代表的なギャグ作品のひとつではあるのだが、少年チャンピオンコミックスからは1巻のみが刊行されただけで、その後他のシリーズ、他社からの再刊行もなく、単行本未収録のエピソードがかなりあるものと思われる。
基本的なストーリーは、やんちゃ(?)な主人公の赤ん坊が巻き起こすドタバタで、それが大人顔負けのエグい行動であることから「ざんこく」というタイトルがつけられたものと推測される。
「ギギギ」というベビーの不気味な笑い方と「いつか殺してやる」というほとんどの登場人物たちに共通なセリフが、印象に残るが、70年代の世相を反映しているといったら言い過ぎだろうか。同時期には谷岡ヤスジなども活躍していて、極端な暴力や流血というのはギャグ作品ではありふれたものになっていた感がないわけではない。そのうえで「ざんこく」という言葉をタイトルに入れたことで、より過激な描写を要求されることになったのは事実だったのではないだろうか。
とはいえ、本書カバーの折り返し部分のコメントに「ベビーちゃん一家は、抑圧された現代社会の縮図ではないでしょうか…」とあるように、本作でもジョージ秋山はギャグにペーソスを混ぜて、単に極端な描写による笑いだけを追求しない。
ジョージ秋山の単行本は刊行作品がシリーズとしてまとめて刊行された際にも本作はラインナップには入っていなかった。初期の代表作のひとつとして、完全版での刊行が望まれる。
書 名/ざんこくベビー?
著者名/ジョージ秋山
出版元/秋田書店
判 型/新書判
定 価/250円
シリーズ名/少年チャンピオンコミックス
初版発行日/昭和46年1月5日
収録作品/ざんこくベビー1〜12話
(文:猫目ユウ / http://suzukaze-ya.jimdo.com/)