さらに浦和のサイドがボールを持った時、ガンバはあまり人数をかけなかった。例えば槙野や梅崎司が左サイドでボールを持った時、「左足で左クロス」はほぼないため、加地と岩下敬輔は中で奪うことだけを考えればよかった。

 ここに「偽の4バック」の弱点があり、右サイドから右足クロスはあっても左サイドから左クロスがないためピッチの幅をうまく使えない、守備側にとってはコーナーフラッグ付近を捨てて中を固めても守りきれてしまう。これが■1)と■2)の要素。

 でも、これだけでは浦和を封じきることはできない。やはり、ボールを奪ってから得点に繋げるまでの能力が高まったこと、つまり■3)が大きい。先制点は阿部浩之の個人技であり、この得点で主導権を握ったのは間違いないところ。しかし、やはり2点目と3点目におけるレアンドロの得点力は見逃せない。

 2点目に関しては浦和の集中力が途切れていたけれども、これは20本近く回されてサイドを変えられた時点で多分「あまりないこと」ではなかったかと。また、リシャルデスが(恐らくいつも)あまり守備をしないため、サイドを変えられた際に浦和の逆サイドに進出した藤春へのマーカーが完全にいなくなり、DFラインから阿部勇樹が飛び出して対応しようとするも間に合わず、さらに阿部のカバーを平川がやるというチグハグな守備になり、結果出し手の藤春も、受け手のレアンドロも完全に離してしまった。

 3点目で事実上試合は決まったけど、これにしても槙野のポジショニングはどうかと思うけど、二川→藤春→レアンドロといずれも高い技巧が合わさった展開で、つまり「攻めきる」ことができるためサイドバックも上がるしパサーも死なない。「あのガンバ大阪」が戻ってきたと判断するには十分な材料が揃ってるなと。

 残りの失点については詳細は割愛、ただレアンドロが足をつって出てくるのがパウリーニョというのもかなりエグい。ガンバは得点シーン以外にも決定機をいくつも作り出しており、まあ誰の目から見ても完勝という結果に相成った。
 
 浦和に関して、この試合は割と「ミシャサッカー対策」で正々堂々と打ち破られた感じ。ちょっと、今後に尾を引きそうな気はする。もちろんここまでうまく対策し、浦和が苦しんだピッチでも簡単にボールを回し、縦1本でも得点できるチームはそう多くないが。

 あとはボランチの位置、シャドーの位置で相手に対応されたとはいえボールロストが多く、このあたりはボランチとシャドーにフタをされた際の迂回の仕方、プラス完全に試合から消されていた1トップ原口がいかに動き出していくか、そこにどのタイミングでボールをつけるか、そのあたりをもっと整理しないとキツい感じはした。まあ、構築1年目のチームだから「対策への対処」が整理されていないのは当然ちゃ当然だけども。

 で、割と今までは壮大な前ふりで本題は「広島はこのガンバにどう対処する?」ってところですが、上記の分析が正しければ対処のとり方は結構ある。シャドーへのマンマーク、バイタルを埋める守備はどこでもやってきて、ボランチとシャドーのパスコースを消すのもやってくる。しかしこの守備でサイドに追いやられたとき、広島には浦和にない2つの方法論がある。
 
 1つはサイドの縦突破。ミキッチは1人でも周囲のサポートを使っても持ち出せるし、清水にせよコーナーフラッグ付近のスペースを使って左クロス、ミキッチなら右クロスを上げられる。ガンバは、浦和戦のように中をガチガチに固めることはできない。必ず1人は釣り出せる。つまりシャドーや佐藤寿人へのマークが緩む。
 
 もう1つは青山から佐藤寿人への縦1本。DFラインを高く上げてくるなら、今野にせよ岩下にせよそこまでスピードはないので、寿人にとってはかなり「おいしい」相手になりえる。DFラインが高くできなければ、やはり中盤にスペースが生まれる。

 ということで、まとめると、浦和を5−0で破ったガンバは相当強いし警戒すべき相手だけど、同時に広島は「ミシャサッカー対策」への経験値が高いため、打ち破れる可能性もまた高いだろうなということ。
 
 まあ、もちろん「広島対策」を打ってくると思うし、何も対策されなくたってガンバは強い相手だけれども、先に浦和がやられたことで広島も警戒できる。そういう意味で、この試合を見ておいてよかったなと思う。あ、別に「だからガンバには勝てる」とかそういう意味ではない。遠藤と二川というパサーがいて、家長というタメを作れる選手がいて、レアンドロというフィニッシャーがいて、阿部・藤春というアタッカーがいるフツーに強いチームなので。