プライドが高いのは確かだろうし、頑固も間違いないだろうし、腹に溜めておけない性格でもあるのだろう。

 しかしそれはまた、期待の裏返しであるし、一本気で正直過ぎる性格の発露。彼が高いレベルのプレーを期待していることは間違いないし、そのためにも日頃の練習と努力が必要だと考えていることは、「阪神二軍監督時代の指導の日々が充実していた。向いていると思った」という著書での発言にも明らかだろう。「いっつも同じミスやもんな」という彼の嘆きは、何練習しとんのという失望の溜息であり歯ぎしりなのである。
 だからこそ、彼は期待に違わぬプレーは―「これくらいはやってもらわんと」という“らしい”言葉が付くこともあるし、手のひら返しの評もなくもないが―素直に褒めるのだ。ローテーションと打順は動かさないのが理想としながらも1、2軍の入れ替えを頻繁に行っているのは、努力の成果を見せてくれる選手を目の前にしたいからなのだ。

 彼は著書に記している。「ベンチワークの必要のない、何も特にせんでも終わってみたら1対ゼロで勝っているようなスタイルの確立こそ、最強のチーム作り」
 そのスタイルをWBCで見せてもらおうではないか。ハイレベルのプレーに納得顔で肯きながら、試合後のインタビューでは「おれは何もしとらんよ。打った選手が偉い」「そら、そうよ。ものがちゃうよ」と語る岡田監督の満足気な表情が見てみたい。

 指揮官として微妙だった原読売監督が、WBC優勝で名監督に祭り上げられたようにはならなくとも、監督としての岡田氏の本来の器量を示す最適の機会と考える次第である。