[画像] 創作系必見・3Dキャラと連動するデッサン人形『QUMARION (クーマリオン)』を触ってみたレポート



3Dキャラクターを操作直感的に操作できる、人型入力デバイス『QUMARION(クーマリオン)』。先日、『QUMARION パッケージ』の予約販売が行われ、予約開始からわずか3週間程で初回出荷分が完売御礼となるほど話題となっている。

今回オタラボでは本製品について取材を行った。
本製品について興味を持っているけどもっと詳しく知りたい、といった方はもちろん、絵を描く方や、3D動画制作など、創作に興味ある読者向けに、少しでも手法の提案、創造への手助けになればと思う。

そもそも『QUMARION』って?

-人型入力デバイス『QUMARION』と、実際にそのポーズと連動した3Dキャラクター

『QUMARION』についてそもそも、どういったものなのかわからない読者もいるのではないかと思う。

『QUMARION』とは、3Dキャラクターを操作するための人型入力デバイスだ。簡単にいえば、PCに対するマウスのようなもので、人型関節可動式フィギュアのような『QUMARION』を操作することによって、コンピューター画面上に表示されている3Dキャラクターを、『QUMARION』と同じポーズに操作ができる。

本製品『QUMARION パッケージ』には、本体である人型入力デバイス『QUMARION』のほか、『QUMARION』のポーズを取り込んで、イラストや漫画を制作できる、イラスト制作ソフトウェア「CLIP STUDIO PAINT PRO」、『QUMARION』のポーズから動画を制作することのできるモーション作成ソフトウェア 「CLIP STUDIO ACTION」、『QUMARION』で操作するキャラクターを作成できる、キャラクター編集ソフトウェア 「CLIP STUDIO COORDINATE」が同梱されている。

これらのソフトを使うことによって、『QUMARION』を使ったあらゆることが実現可能となる。
また、ソフトの一部は『QUMARION』専用といったことではなく、例えば「CLIP STUDIO PAINT PRO」では単体で様々なタッチのイラスト制作や、漫画制作が可能。先日『QUMARION パッケージ』販売に先駆け、ソフト単体にて販売を開始している。
同ソフトウェアを制作しているセルシスは以前から、プロ・アマチュア問わずマンガ制作に使われている「Comic Studio」が有名だが、こちらを進化させ、イラスト制作ソフトと合体した新たなソフトが「CLIP STUDIO PAINT PRO」となる。

同梱のソフトを使って実際に動かしてみよう
実際にセルシスの担当者より、具体的な操作を見せてもらった。
「CLIP STUDIO PAINT PRO」自体は水彩のような淡い塗りや、油絵のような重厚な厚塗りイラスト、マーカーや鉛筆など様々なタイプのイラストから、コマ割り、ふきだし、トーンなど漫画をデジタルで制作できるソフトで、そこに『QUMARION』を加えることによって、さらに進化をする。

というのも、イラストや漫画を描いていて、「このポーズどうなっているの?デッサン人形を見るか、家族にモデルになってもらおう……」「"あおり"や"ふかん"ってどう描くの?」「かっこいい視点や構図ってどんなのがあるのかな?」といったことにぶつかったことがあるのではないだろうか。
その時に使えるのが『QUMARION』だ。デッサン人形と同じように、またモデルの人に頼むのと同じように『QUMARION』に好きなポーズを取らせる。すると、ソフト上に表示された3Dキャラクターにすぐさま反映し、3Dキャラクターを下絵にして作画することができる。
従来のデッサン人形のようにポーズをつけたあとで、撮影したり、見て描いたりといった手間が必要なく、イメージしたポーズをリアルタイムで確認しながら、ダイレクトに下絵として作画に利用することができるというわけだ。


-ボーンさえ組み込まれていれば、等身の違うキャラクターにもポーズを付けて下絵にできる

絵の表情を出すには"ポーズ"がとても大事であるが、さらに細かい表情を表現するための手の表現にもこだわっている。
手を『QUMARION』だけで細かく指定するには無理がある。すべての指まで可動にすると、『QUMARION』本体の重さやギミックにも影響してきてしまううえ、『QUMARION』の物理サイズも大きくなってしまい、手軽に動かすことができなくなってしまう。ということで、こまかな指の動きに関してはソフトウェア上でかなり直感的に操作が可能。
手を握ったり、指をいくつか固定したりといったこともできるので、さらに表情豊かなイラストを製作可能だ。

モーション作成ソフトウェア 「CLIP STUDIO ACTION」を使えば、それらのキャラクターをつかって動画を手軽に制作することも可能だ。

動画を作ったことのある人はわかると思うが、パラパラ漫画の要領で、静止画のポーズを少しずつ変えたものを挿し込んだり、3Dキャラクターを少しずつ動かしたりして動画を作るのでとても手間がかかる上、不自然になりがちだ。
本ソフトでは、『QUMARION』の動き始めのポーズから、途中経過などをいくつか記録していくことによって、ポーズとポーズの間を自動的に補完してより自然な動きを制作できる。
また、足元を固定にしたりできるため、よりポーズを変えても自然な動きをトレースできるような仕組みも取り込まれている。


-モーション作成ソフトウェア「CLIP STUDIO ACTION」を使う。右下に動画のフレームが表示されている

これらで利用する3Dキャラクターは自作も可能だが、セルシスが提供しているデータ共有サービス「CLIP」から、セルシスが提供しているキャラクターや、他のユーザーが制作した利用可能なキャラクターデータをダウンロードして使用することができる。
実際にセルシスの担当者からサンプルとして見せてもらったのも、かわいい女の子のキャラクターや、かっこいい制服の男の子など、実際に実用性の高いモデルを利用することができた。
背景データなどを取り込むと、さらに背景込みの、実際の視点に近い下絵を利用することもでき、さらに文字や漫画制作につかうふきだしなども3Dデータでバランスをとってイメージをつかむことも簡単にできる。


-様々な3Dキャラクターがダウンロードできる。ものによっては表情も切り替えることができ、さらにイメージが膨らむ

また、キャラクター編集ソフトウェア「CLIP STUDIO COORDINATE」を使うことにより、上記ソフトで使うための3Dキャラクターを編集することができる。他社3D制作ソフト(Mayaや3ds Maxなど)で作成した3Dモデルを読み込むことができ、『QUMARION』にて動かすために必要なボーン(3Dキャラクターを動かすためのいわゆる"骨組")の設定も行うことができる。また、キャラクターだけでなく3Dの背景の編集も可能となっている。

各ソフトウェアはWindowsとMac対応なため、広い環境にて使用することができる。また、『QUMARION』自体も、USBで接続が可能(長めのUSBケーブルも同梱!)なうえ、別電源(ACアダプタなど)が不要なため、気軽に取り回すことができる。

おまけでさらに片手でマウス操作などが可能なデバイス「Tab-Mate Controller」も同梱されるため、さらに直感的な操作ができるようになるとのことだ。

『QUMARION』本体を語る

-豊かなポージングが可能な『QUMARION』

『QUMARION』は、デバイスとして素晴らしいものではあるが、フィギュア、人形としてもとてもすばらしいものというのを、実際に触ってみて感じた。
『QUMARION』はもともと、筑波大学発ベンチャー企業であるソフトイーサと、電気通信大学発ベンチャー企業であるビビアンが中心となって研究開発を進めてきた、3D-CGデータを操作するために開発された入力装置、および制御技術である『QUMA』が元となっている。
またデザインには、フル可動ガレージキットやフル稼働フィギュアである「武装神姫」、「figma」などの原型、コンセプトを創り上げたことで有名なフィギュア原型師である浅井真紀氏が携わっている。

各界のプロフェッショナル達が集まり、創り上げられたのが『QUMARION』だ。
そのため、使っている側はあまりにも自然すぎて気づかない部分で、かなりの技術・こだわりが反映されている。

実際に触ってみると、不自然なポーズにはならないところで関節が自然にとまることや、意識はしていない部分であっても、実際に人間が稼働する意外な部分などがきちんと動くことに気付かされる。
それは、太もものひねりであったり、膝関節の可動域であったり。
ここは人間の構造上あまり動かさない部分だ、逆に意識はしていないが実は動く部分だ、といったところをきちんと押さえている。

基本的には入力デバイスなため、機械が組み込まれているはずであるのに、スムーズに、正しい位置に正しい可動域で動かすことができるのだ。
これはなんども言うようだが、意識しないと気づかない部分ではあるが、すごいことである。

ここまでのことが実現可能な『QUMARION』、造形業界的にも、機械的にもすごいことであり、この値段で実現できることに驚愕した(ソフトイーサの営業マンのようだが……)。

筆者はフィギュアやドールの趣味もあるため相場観を計算してしまい、思わず「この性能でこの値段、むしろ安いですよねえ」と言うと、担当者も苦笑いしながら、「そういっていただけると嬉しいです。やはり値段だけみてしまうと高い、という声も聞くので……」と語ってくれた。

様々な技術が集結して作られた『QUMARION』、それだけでも"萌えアイテム"といえる。

創作の邪魔をしない、あくまでデバイス。でも、勉強になるということ
今回実物を触らせてもらって、かつ開発者の方々のおはなしを聞いて感じたことは、本当に"創作のために作られたもの"ということ。
基本的には、絵を作る際の手助けとなるものであって、それだけで創作するものではない。しかし、絵にとって大事なものに気づかせてくれるのだ。

『QUMARION』を使っていると、なかなかうまいポーズが取れないことに気づく。これは、ツールとしてダメなわけではなく、自分がセンスのある、かっこいいポーズを思いついていないだけなのである。

実はイラストは、もちろん顔は大事ではあるが、ポーズや構図で、かっこよさや可愛さの決め手になったりする。
どんなに素敵な絵でも、ポーズや構図がダサかったら台なしなのである。
この『QUMARION』を使うことによって、それを学習できるのではないかということがわかった。かっこいいポーズや構図を考えようとして、『QUMARION』をひたすら動かしてみる。そうすると、人形だけではわからない、実際に3Dキャラの静止画として画面に表示させたときに、どの角度がかっこいい、どのポーズがかっこいい、など細かく気がつかされるのだ。

開発している各社の担当者も、製品化へ向けて触っているうちに、そういったことにとても気付かされたと語っていた。原型の浅井真紀氏も、やはりポーズが大事ということを開発陣にも語っていたようだ。

絵を描くに当たって、こういったことを考えることも創作のひとつだと考える。それを、直感的に、かつスピーディーに実現できるのがこの『QUMARION』なのである。

これはどんなに筆者が説明しても、やはり触ってみないとわからないことが多い。
『QUMARION』を実際に触って体験できるように、掲載時(2012年7月18日現在)では、東京・秋葉原のTSUKUMO eX. 6階、パソコンパーツフロアで展示されている。
また、今後体験できるキャンペーンを各地で行っていくとのことなので、ぜひその機会に触ってみてほしい。

製品概要
製品名:QUMARION
予約開始日:2012年6月21日(木)
初回出荷限定価格:67,800 円(税込)
発売元:株式会社セルシス
対応OS:Windows / Mac OS X

製品仕様
サイズ(幅×高さ×奥行き):29.0×30.8×10.8 (cm) ※腕を左右に広げ、直立した際の大きさです
質量:255g
インターフェース:Mini USB2.0
電源:USBバスパワー
消費電流:100mA
動作環境:温度:0℃〜40℃、湿度:20%〜80%
稼働関節数:16ヶ所(32センサー)X

製品内容
. QUMARION本体
. 本体付属品
 ・手の交換パーツ2種類
 ・専用工具
 ・USBケーブル
. 同梱ソフトウェア
 ・CLIP STUDIO PAINT PRO
 ・CLIP STUDIO ACTION
 ・CLIP STUDIO COORDINATE
. Tab-Mate Controller
. オーナーズカード
. QUMARION取扱説明書

初回限定特典
・Maya/Maxプラグイン(Windows版のみ)
・QUMARION専用スタンド
・QUMARION Chronicle(小冊子)
 ・【対談】高河ゆん × 浅井真紀
 ・【対談】redjuice × 浅井真紀
 ・【対談】日本橋ヨヲコ × 浅井真紀
 ・QUMARIONキーポーズ
 ・QUMARION開発秘話
・A4書き下ろしポスター 3枚
 ・redjuice描き下ろしポスター
 ・高河ゆん描き下ろしポスター
 ・日本橋ヨヲコ描き下ろしポスター
・QUMARION特製グッズ
 ・QUMARIONシルエットシール
 ・QUMARIONクリアファイル

※『QUMA』技術は3D-CGデータを操作するために開発された入力装置、および制御技術です。
 ソフトイーサ株式会社と株式会社ビビアンが中心となって研究開発を 進め、セルシスもソフトウェア分野において協力を重ねています。

○QUMARION サイト:http://www.clip-studio.com/quma/

CELSYS、CLIP、QUMARION、ILLUST STUDIO、COMIC STUDIOおよびRETAS STUDIOは、株式会社セルシスの商標または登録商標です。
その他の会社名または製品名は、各社の商標または登録商標です。

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