■勉強とスポーツは別物ではない

おそらく、日本でグアルディオラやナダルのこうしたエピソードを出すと、「一流の監督、アスリートなのに偉い」という反応が返ってくる。ただ、個人的に最近思うことはこうした特別視がスポーツを社会から切り離し、スポーツ文化の浸透にとって足かせとなっているのではないか。「文武両道」を美徳とする日本ではあるが、まだまだ文武が切り離され、勉強とスポーツは別物と考えられる。だからこそ、部活動に『引退』なるものがあり、10代の若者が平気で「受験勉強のために引退します」と口にする。

日本でペップの「空っぽになった」という言葉を使えば、それは『バーンアウト』を意味するのだろうが、欧州ではオフがありそこで充電するからこそ次の仕事でまた全力を尽くすことができるという認識で受け止められる。「充電を終えればまたサッカー界に戻ってきてくれる」と理解するからこそ、スペインではペップの決断がリスペクトされる。「空っぽになった」と言うグアルディオラの決断に対する受け止め方の違いを認識し、日本人として正していかない限り、本当の意味でのサッカー文化の浸透は難しいのではないだろうか。

■著者プロフィール
小澤 一郎
1977年、京都市生まれ。サッカージャーナリスト。スペイン在住歴5年を経て、2010年3月に帰国。スポナビ、footballista、サッカークリニック、サッカー批評、サッカー小僧、ジュニアサッカーを応援しよう!などで執筆中。
著書に『スペインサッカーの神髄』(サッカー小僧新書)がある。また、「まぐまぐ」より、メルマガ『小澤一郎の「メルマガでしか書けないサッカーの話」』を配信中。