武蔵野も後半の早い時間で攻撃的なカードを3枚切るなど、勝負を賭けたものの、チャンスは作っても、押し込むためのアイディアがもう一つ足りなかった。一方の長野は完全にゲームを掌握。宇野沢が2ゴール、途中出場の田中恵太も初ゴールを決め、5-0での完勝となった。

■俺たちは勝ってアピールするしかない

やはりゲームを大きく動かしたのは先制点。両監督も考えは一致していた。「ミスからの失点で立ち直れなかった」(武蔵野・依田博樹監督)、「横河武蔵野のディフェンスをどう崩すか。1点とるまでは難しいかなと思った」(長野・薩川了洋監督)。とはいえ、この快勝劇には普段は辛口の薩川監督も流石に「今日は合格点を出しても良いと思う」と高い評価を与えていた。

長野は現在、3勝無敗1引き分けで暫定4位。チーム力を考えても、讃岐や長崎、SAGAWAなどの強豪チームと激しい優勝争いを繰り広げることは間違いない。しかし――。今シーズン、どれだけ好成績を残してもJリーグ昇格はならないという現実に、長野は直面している。

しかし薩川監督はあくまでも意気軒高だった。「こういう試合を続けて一年でも早く、という流れにしたい。俺たちは勝ってアピールするしかない。選手たちも『上がれないから……』なんて考えている奴はいない」。指揮官の表情に、曇りはなかった。

(了)

■著者プロフィール
多岐太宿
物書きを目指していた2004年末、地元に偶然にもアルウィンと松本山雅FCがあったことから密着を開始。以来、クラブの成長と紆余曲折を偶然にも同時進行で体感する幸運に恵まれる。クラブ公式、県内情報誌、フリーペーパー等に寄稿。クラブの全国区昇格を機に、自身も全国区昇格を目指して悪戦苦闘中。