リーグ戦に出場しているため大会に招集できなかった選手の名を上げながら、そんな風に語っていた原強化委員長を見ながら、呑気だなぁと思った。もちろんそれらの大会に出場した経験を活かし、現U−23代表で活躍している選手もいるが、10年秋に関塚監督のもとで本格的なスタートを切るまでの時間を有効に利用できたとは言えない。

 ワールドカップ南アフリカ大会後にA代表の監督が代わる。A代表と五輪代表に継続性を持たせるためにA代表の指揮官就任を待って、五輪代表を始動させたいと考えていたのかもしれない。しかしアテネ、北京と日本人監督が五輪代表を率いている。先に日本人監督でチームを始動させ、その後、その監督をA代表コーチに就任させるなど、やり方はあったと思う。U−20ワールドカップという国際経験を積む貴重な機会を失った世代に対して、どれほどの危機感を抱いて強化していたのだろうか? 

 Jリーグでの経験も大切だが、それは国際経験とはまったく別のもの。欧州組が増えたA代表ですら、アウエイでの試合を求める声は多いのだから、ユースや五輪世代でも同様、もしくはそれ以上に国際経験が求められるはずだ。

 少し話はそれるが、1979年生まれのゴールデンエイジと呼ばれる世代は、ワールドカップ招致の関係で、中学時代から海外遠征を数多くこなしてきた。そのことが彼らの意識を変えた。他の世代の選手の中にも「ワールドユースで初めて世界を意識した」という選手は多い。

 五輪代表の強化は年々難しくなっているのも事実だ。高校を卒業した19歳から20代前半の選手の強化は、Jリーグでも大きなテーマとなっている。出場機会が得られず伸び悩む者も少なくない。また、早い時期に海外移籍してしまう選手もいるわけで、拘束力のない五輪代表への招集もかなわない。現在チームの主力であっても五輪本大会時には欧州クラブに所属し、招集できない可能性だってある。

 それにしても、名古屋の金崎や鹿島の柴崎など、Jリーグで出場経験を積んでいる選手の中で招集されていない選手もいる。他にもJ2の選手の招集もわずか。J1でベンチを温めている選手よりもJ2で試合出場している選手のほうが経験値は高いと思うのだが……。五輪代表としての経験が少ないという判断だったとしても、今回は3週間も合宿時間があり、新戦力を馴染ませる絶好の機会だったはずだが……。
 
 アテネ世代も、北京世代もアジア予選で苦しみ、自力突破の可能性を危うくしながら、本大会の切符を掴んだ。しかし、どちらも本大会ではいいところなく惨敗している。そんな約10年間の日々を考えると様々な問題点が頭に浮かぶ。それでもA代表は結果が出ているし、北京世代の多くが欧州へ移籍しているのだから、別に頭を抱える必要もないんじゃないかとも思ったりする。ロンドン世代とて欧州組は多い。

 そもそも、U−23代表というのは、世界のサッカーシーンから見たら、いびつな代表だ。その世代のトップグループは皆、当然のようにA代表でプレーしているし、クラブでも主力として活躍している。欧州ではそれほど重要視されていない代表なのだ。

 それでも、クラブでの国際試合の少ないJリーグでプレーする選手にとって、U21〜U23代表の活動は育成面において、欠かせないチャンスであることに変わりはない。アジアで終わるか、世界へ行くか、その違いは大きい。