特に、最後は個人技で打開する、という事を想定している海外の場合には、そこが大きな差になってくると思っています。パス、パス、パス、で崩し、最後もドリブルを使わずにシュート、という攻撃を志向する事が多い日本のサッカーとは違い、ラストプレー、ラス前のプレー、更にその1つ前のプレー、どこかではドリブルで打開する事、個人技で打開する事、それを想定した攻撃を志向する事が多いのが海外のサッカーで、ここはとても大きなポイントであると思っています。

そして、なぜ海外ではそうなのかと言えば、それが、数的優位を作るため、もしくは、少ない人数でも得点を取れるようにするため、という事ですね。どこかの段階の局面を個人技で打開できれば、他のどこかの段階の局面では数的優位を作る事ができる。もしくは他の場所の局面では数的優位を作る事ができる。更には、最も数的不利になりやすい場所である相手のPA内、そこで決める必要性、という事ですよね。

バルサのサッカーに、トータルフットボールに、なぜ圧倒的な、飛び抜けた、強い個の力を持つような選手、クライフやメッシのような選手が必要不可欠なのか? それは、そういう、1人で2人や3人を相手にできる選手、2人や3人に囲まれてもボールを奪われない選手、2人や3人に囲まれてもそこを突破できる選手、そういう選手がいる事で、他の段階や局面で数的優位を作りやすくなるから、という事ですよね。

バルサはメッシシステムである。これは大きく間違っていないと思います。しかし、その意味は、メッシを活かすためのシステムである、メッシのためのシステムである、という事ではなく、メッシが他の選手を活かすためのシステムである、メッシがいる事によって他の選手が活きるシステムである、という事で、ここが重要なところだと思っています。

メッシをサイドに張らせる形というのは、メッシを活かすシステム。しかし、メッシを中央でプレーさせるというのは、メッシが他の選手を活かすシステム。グアルディオラが見つけた完成型というのは、メッシを活かすシステムではなく、メッシが他の選手を活かすシステム。つまり、メッシを活かすシステムではなく、メッシが他の選手を活かすシステム、そう変えたという事が、そうする事が良いと気がついた事が、グアルディオラの凄さですね。

バルサの試合を観ていて、イニエスタもシャビもセスクも要注意選手なのに、なぜそういう選手たちがフリーになっている事があるのか? と疑問に思った事はありませんか? なぜならば、そういう選手たちも危険だと分かっていても、メッシには2人や3人で対応しないとダメなので、そうなると、どうしてもイニエスタやシャビやセスクのような選手にまで付ききれない、フリーにしてしまう、という事ですね。だから、メッシを活かすシステムではなく、メッシが他の選手を活かすシステムである、という事ですね。

という事で、なぜ日本人FWがなかなか得点を取れないのか? なかなか活躍できないのか? というところから、数的優位についての考え方、バルサにおけるメッシ、メッシがいるバルサ、というところまで書いてみました。話があちこちに行っているようですが、しかし、言いたい事は一つで、日本人選手は個で局面を打開する能力をもっと高めるべき、という事ですね。

そうなる事でもっと日本人選手が海外で活躍できるようになる、というのは言うまでもなく当然の事、更にもっと重要な事は、そうなる事でもっと日本のサッカーが高いレベルのシステムを使いこなせるようになる、もっと高いレベルの組織力を身に付ける事ができるようになる、という事であり、これは、攻撃的なサッカーを望むならもっと守備力を、という事と同じですね。高い組織力を望むならもっと個の力を、という事でもあります。