勝つことは勝ったものの、ポポヴィッチ監督の目指すサッカーはできなかったではないか。勝又にそう問うと、「確かに内容的にはよくなかったけど、あれはあれでポポヴィッチ監督のサッカーなんです」と強い口調で返してきた。そして、「メンタルの面ではポポヴィッチ監督が求めているものは出せたと思っているんですよ。粘り強く守れたし、攻撃がうまく行かなくても焦ることなく戦えた。メンタル面で成長したなと感じる試合でした」と続けた。

■クラブは哲学をもたないといけない

ポポヴィッチ監督は練習でちょっとでも気の抜けたプレーをした選手に対して怒声を張り上げ、叱咤してきた。特に球際や切り替えの部分で負けることをポポヴィッチ監督は嫌い、常に気持ちを強く持って戦うことを選手たちに要求してきた。一見華麗に見えるパスサッカーだが、そのサッカーで勝利を手にするためにも、局面での強さが必要であることを説き続けた。その積み重ねが守備の強化にもつながったのだ。「強い気持ちと責任感を見せてくれた」。最終戦後、ポポヴィッチ監督は選手たちを讃えたのであった。

1年間攻撃サッカーを貫いてJ2への扉をこじ開けたポポヴィッチ監督。町田というクラブに「攻撃サッカー」の礎を築いたことは間違いない。だが、ポポヴィッチ監督はただ単に「攻撃サッカー」をしたわけではない。指揮官が最も伝えたかったのは、「攻撃サッカーで勝つために必要なこと」であった。クラブは監督が替わっても攻撃サッカーを志向する意思を示している。そのサッカーで、J2という新たなステージで戦い抜くためにも「組織で個を生かす」「強い気持ちと責任感」というキーワードが重要となることは間違いない。

ポポヴィッチ監督は常にこう言っていた。「クラブは哲学を持たないといけない」。町田が持つべき哲学は「攻撃サッカー」ではない。「攻撃サッカーで勝つ」ということだ。そのためのベースをポポヴィッチ監督は築いたのである。

■著者プロフィール
【佐藤拓也】
1977年生まれ。北海道生まれ、横浜育ち。日本ジャーナリスト専門学校卒業後、フリーランスのライターとして活動を開始。その後、「EL GOLAZO」や「J’sGOAL」、「週刊サッカーダイジェスト」「週刊サッカーマガジン」「スポーツナビ」などサッカー専門媒体に執筆。現在はJ2を中心に様々なカテゴリーを取材して回っている。

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