―:ルーキー級で3年間でプレーした後、今年ローウェルに昇格を果たしたことは、非常にいい経験だっただろうね。 
ハ:本当に、ルーキー級にいた時とは全然違う生活だったよ。バスに乗ってロードに遠征に行き、3試合プレーしたらまたバスに乗って、次の目的地へ行く。このゲームを、心から愛してくれている人たちの前でプレーできたことは、本当に素晴らしい体験だった。メジャー昇格という夢を叶えたいという思いが、より強くなったね。 

―:さっき君は、オフシーズンの間に母国で野球を教えていると言ったよね。君にとって、いわば「野球大使」としての役割を果たすことは、非常に重要なことなのかな? 
ハ:そういう役回りを自分が担っていることは、本当に重要なものとして真剣に捉えているよ。これまでたくさんのクリニックをやってきたけど、そこにやってくる子供たちは、皆僕と一緒にトレーニングに励むことを、本当に楽しんでくれている。そして去年、リック・バンデンハークが立ち上げたMLBヨーロッパツアーには、僕自身も今年参加したけれど、そうした機会の中でも特にビッグなものだと思う。 

 ここに参加した子供たちは、皆現役大リーガーに会う機会に預かれる。今年はデクスター・ファウラーや、先日亡くなってしまったグレッグ・ハルマン、あるいはプリンス・フィルダーなど、ビッグネームが数多く参加した。彼らは皆、オランダの子供たちに対して、ゲームの基礎を教えるためにやってくるんだ。特に今年W杯を制した後、そうした取り組みが行われるのは、本当にオランダ野球にとって素晴らしいこと。頭がどうかなってしまいそうなくらい、興奮する出来事なんだ(笑)。 

―:オランダにおける野球というのは、どのように運営されているんだろう?アメリカでのそれと比べると、どんな違いがあるのかな? 
ハ:オランダの、最高峰リーグでプレーする選手たちをイメージしてほしい。彼らは皆、他に仕事を持ちながらプレーしているんだ。彼らは野球だけに集中しているわけじゃなく、フルタイムの仕事を持っていて、それと並行して野球もやっている。練習は普通、火曜日と木曜日の週2日で、週末に2試合をプレーしている。アメリカでやっているほど、何試合も練習できるわけじゃないから、全く違う文化なんだ。だから、残念ながらアメリカと比べると、プレーのレベル自体はそこまで高いわけじゃない。 

 ただ、試合の演出自体は本当にプロ野球そのもので、電光掲示板もあれば実況解説もある。アメリカのフィールド周辺で起こりうることは、オランダでもちゃんと起こるんだ。そして最も嬉しいのは、オランダの球界関係者たちは皆、オランダにおける野球をビッグなスポーツにしようと、本当に真剣に取り組んでいるということだね。 

―:そもそも、君が野球を始めたきっかけというのは、なんだったの? 
ハ:元々は、父がプレーしていたんだ。父はビール会社がスポンサリングするチームで長くプレーしていて、試合後にクラブハウスでビールを飲み始めると、常にそこで「10イニング目の試合」に没頭していた(笑)。僕も、常に彼の応援のために試合を見に行っていて、そうした中で自然と野球が好きになっていったんだ。一番最初に父が教えてくれたのが、ティーボールだった。ずっと没頭しているうちに、僕はそれぞれの年代におけるトップレベルで、プレーする機会を得ることができるようになったんだ。 

 以前オランダジュニア代表でプレーしていた時、ビル・フローバーグがコーチをしていたチームと対戦する機会があった。その時、彼はオランダ代表のコーチも務めていて、僕を練習に誘ってくれたんだ。僕はその練習に参加した後、ちょうど開校したイタリアのMLBアカデミーで行われた、トーナメントに参加した。いつも、周りには多くのスカウトがいたよ。今、フル代表の監督を務めているブライアン・ファーレイもそこにいて、僕を見出してくれた。そこで契約書にサインした後、当時通っていた調理学校を卒業してから渡米したんだ。