今節はAC長野パルセイロが負け、V・ファーレン長崎とツエーゲン金沢がドローとなった。上位陣がお付き合いするかのように勝ち点を伸ばせず、松本山雅は町田ゼルビアと勝ち点差なしの5位につけた。まだ試合数にばらつきがあるものの、昇格圏内の4位に手のかかる位置についた。ここまで来た以上、簡単に負けることは許されない。「今日の収穫は結果だけ。でも今は内容よりも結果」。選手たちは口々にそう話した。まるで、煮え切らないこの試合のことを振り払うかのように見えた。

■辿り着きたいあの場所

松本山雅で2年間プレーした小林陽介は、今季から古巣でもある横河武蔵野に移籍し、現在チーム得点王として活躍している。「松本山雅は、個人的には意識していないと言えば嘘になる。ただうちも勝っていかないといけない。(この試合は)ボールをもつ時間は長かったが、決定的なチャンスは作れなかった。もっと一人ひとりが考えていかないと」と真剣な面持ちで現状を語ってくれたが、取材終了後に「相変わらず素晴らしいサポーターで……」と表情を緩めた。

「他の準加盟クラブに比べても一番ではないですか。とにかく多い」。この日の取材申請者について横河武蔵野のスタッフが説明するように、県内からも多くのメディア関係者が足を運んでいた。もちろん松本山雅の取材のためである。

Jリーグを目指すから、お客さんもたくさん入り、メディアも注目する。ではJリーグ昇格後はどうなるのか。そこはゴールではなく、あくまでもスタートラインのはずである。周りのレベルが高くなれば、当然チームは思うように勝てなくなる。そのような状況で、どれだけのサポーターが見捨てずにアルウィンに足を運んでくれるのか。そう思うのは、考えすぎなのだろうか。

ふと、この試合のホームゴール裏を思い浮かべる。ある意味サッカーを楽しむ術を知り尽くしているであろう横河武蔵野サポーターのことだ。Jリーグ昇格を目指しているわけではない、さりとて企業クラブ色も薄くなっている、いわば過渡期にあるこのチームは、それでもコアなサポーターがゴール裏に陣取り、東京のサッカーファンが観戦に訪れる。下部組織は選手を育て、トップチームもアマチュア最高峰のリーグでプレーを続ける。恐らくこの先も変わることなく。

武蔵野サポーターの歌う、有名な名作のチャントがひとつある。「俺らの週末は・武蔵野のために・声を張り上げ・戦うためにあるのさ・辿り着きたいあの場所」(『Baby cruising Love』/Perfume)

横河武蔵野が、そして松本山雅が“辿り着きたいあの場所”とは、一体どこなのだろう。

■著者プロフィール
多岐太宿
物書きを目指していた2004年末、地元に偶然にもアルウィンと松本山雅FCがあったことから密着を開始。以来、クラブの成長と紆余曲折を偶然にも同時進行で体感する幸運に恵まれる。クラブ公式、県内情報誌、フリーペーパー等に寄稿。クラブの全国区昇格を機に、自身も全国区昇格を目指して悪戦苦闘中。



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