■ボールを動かそうとする意図は明確

ある意味で快勝と言える内容だったが、加藤監督は慎重な姿勢を崩さずに「大橋は実績があり独特のテンポを持つ選手だが、マークが厳しくなればどうなるか。船山は1点取れたことで気持ちは落ち着くだろうが、彼について期待しているのは得点。シュートの精度を高めてほしい」と両選手への注文も忘れなかったが、「中盤でボールが収まって、リズムが生まれた」と新たなスタイルを垣間見せたチームには一定の評価を与えていた。

そのサッカーの中心となった大橋は1ヶ月間練習生としてチームに帯同し、JFLのリーグ戦も観戦してきた。「(JFLは)中盤が抜けている時間が続く。本当はもっと繋いでいきたい。(個人能力による)一発狙いは武器だが、もっと(ボールを)溜めてやりたい。理想はもっと相手を疲れさせたかった」。ボールを動かし、相手も動かす。意図は明確だ。

■理想を求めながら、J2昇格という命題に突き進む

とはいえ、JFLのクラブも千差万別。繋いで崩すポゼッションサッカーに挑むチームもあれば、あえてリトリートの姿勢を変えずにカウンターに賭けるチームもある。そして、今後松本山雅が対戦するクラブを圧倒的に後者が多い。そのような守備的な相手を向こうに回し、この日のようなゲームが出来るかは現状では未知数。加藤監督も「選手全員にこのサッカーを要求するつもりはない」と語るように、選手構成が変われば戦い方も自ずと変わる。現実に勝利を得るためには今まで通りのキック・アンド・ラッシュのサッカーに徹する必要性に迫られるはずだ。選択肢は多いにこしたことはないが、どっちつかずになって、理想も現実も逃してしまうことだけは避けねばならない。

チームが理想とする細かく繋ぐサッカーを遂行出来るメンバーは確かに揃ったと言える。しかし、理想と現実を両方とも追い求める事はたやすいことではない。どこまで折り合いをつけながら、J2昇格という命題に突き進むことが出来るのか、興味は尽きない。

■著者プロフィール
多岐太宿
物書きを目指していた2004年末、地元に偶然にもアルウィンと松本山雅FCがあったことから密着を開始。以来、クラブの成長と紆余曲折を偶然にも同時進行で体感する幸運に恵まれる。クラブ公式、県内情報誌、フリーペーパー等に寄稿。クラブの全国区昇格を機に、自身も全国区昇格を目指して悪戦苦闘中。



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