単なる肉体的な疲労だけではないと手倉森監督は考え、ナビスコ杯柏戦前のミーティングで、選手を責めることなく、選手の今までの労をねぎらい、慰めたと言う。「震災復興疲れという雰囲気が、今全部にあるのではないか。今、世の中が通常っぽくなってはいるが、復興にはまだまだ時間がかかる。震災からの頑張りが落ち着いてきて、社会全体に疲れが見えていて、それは選手も同じだろう。復興への使命を掲げて選手もエネルギーを注がなければならないという形で来ていたが、彼らに無理を強いているばかりでは選手が壊れかねない。負けているからお前達はダメなんだとは一切言わなかった」と、まず精神的疲労を取ることに注力し、事態の打開を図った。

実際ナビスコ杯柏戦では効果てきめんだった。疲労の色が濃かった梁、赤嶺、富田晋伍を先発メンバーから外し、コンディションの良い選手で臨んだところ、久々の先発起用に応えた太田吉彰のドリブル突破から得たチャンスで、この日プロ初のキャプテンマークを巻いて出場した角田誠が豪快なミドルシュートを決め、終了間際には途中出場の富田が前線に上がってヘディングシュートを決めて快勝。良い時の積極的な守備と、長いボールとポゼッションを使い分けたダイナミックな攻撃が少し戻ってきた。

続くリーグ戦の柏戦では0-0のドローに終わったが、これは柏との試合間隔が短すぎ、お互いの手の内が分かってしまったことも要因の一つだ。守備の面では前から積極的に行く姿勢は戻ってきており、チーム状態は大宮戦で底を打って、上向く兆しが見え始めている状況だろう。

■再びチーム状態を上向かせるために

この兆しを「上向き」に持って行くためには、まず主力選手のコンディション回復が必要だ。31日柏戦後にはオフを2日設定している。また、練習時間も極力夕方の涼しい時間帯にするなど、工夫をしている。練習上の工夫で梁、関口、赤嶺のコンディションが上向いてくれば、再び良い時の仙台の攻撃は戻ってくるはずだ。

そして控え選手のさらなるアピールも不可欠だ。久々の先発出場で気を吐いた太田吉彰、高橋義希らのアピールは非常に良かったし、リーグ戦柏戦2試合共出場を果たし、念願のJ1リーグ戦デビューを果たした右サイドバック細川淳矢も正確なクロスを再三見せ、鼻骨陥没骨折で離脱中の菅井直樹の穴を埋めるべく奮闘中だ。また31日柏戦で大卒ルーキーFW武藤雄樹もベンチ入りを果たし、今後に期待が持てる。

まずは自分たちの肉体・精神の疲労としっかり向き合い、徐々にコンディションを上げていく。そしてアピール意欲旺盛でコンディションの良い選手を使っていくことでこの苦境を乗り切り、8月こそは「攻勢の月」にしたい。

■著者プロフィール

小林健志
1976年静岡県静岡市清水区生まれ。大学進学で宮城県仙台市に引っ越したのがきっかけでベガルタ仙台と出会い、2006年よりフリーライターとして活動。ベガルタ仙台オフィシャルサイト・出版物や河北新報などでベガルタ仙台についての情報発信をする他、育成年代の取材も精力的に行っている。


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