ザッケローニはミラン時代、3―4―3と3―4―1―2を併用した。リーグ終盤、優勝が目の前にちらつくと、守備的サッカーの代名詞である3―4―1―2を採用。逃げ切りを図ろうとした。攻撃サッカーの旗手の看板を下ろしてしまった。

ミランの会長から優勝を義務づけられていたから。守備の国イタリアだから。そうした非健康的なプレッシャーこそが、3―4―1―2の採用に踏み切らせた原因に見えた。

ザッケローニのサッカーを見ていると、日本代表の戦いでもその片鱗を垣間見ることができる。前述の韓国戦しかり。チェコ戦の実際の布陣もしかり。攻撃的サッカーの信奉者という感じはしない。使い分けようとするタイプに見える。コンセプトはよく言えばバランスの追求と言うことになるが、悪く言えばどっちつかず。

日本サッカー協会としては、原博実技術委員長は、バランス追求型、悪く言えばどっちつかずの指導者を、探していたわけではないはずだ。「ピッチを広く使ったワイドなサッカー」をコンセプトに掲げていたはずだ。

本来追求しているものと、微妙なズレを感じるのは僕だけだろうか。

GK川島 5.5 プレイ機会にあまり恵まれなかった。

DF今野 6.5 もはやチームの顔。パニックになりにくい体質と見た。

DF伊野波5.5 ロングフィードが欲しい。64分に槙野と交替。安定感では伊野波。躍動感では槙野。

DF吉田6 ゴール前で惜しいヘッド一発あり。ドタドタ感は残るが、身体のデカさは利いていた。

MF長友6 3−4−3の「4」のサイドは、「世界一のサイドバックを目指す」彼にとっては高すぎる。もっと低くなければいけないというのは冗談。問題は逆に、サイドバックの意識をどこまで捨てられるかにかかっている。長友、内田系ではない、つまり、本来サイドバックではない選手、槍タイプではなく中盤タイプをこのポジションに起用する手もある。その方が5バックにはなりにくいかも。

MF内田5.5 本田が中央に入り込むことが多かったため、右サイドに穴を作るまいと、堅実なポジションを取った。その良さもあれば悪さも垣間見た。ボールに絡む回数が少なすぎる。

MF遠藤5 64分に遠藤と交替で入った家長の方が、良く見えてしまった。機動力があるかないかの差になるが、家長の方が新鮮に見えたと言うべきか。遠藤にとってライバル出現?

MF長谷部5.5 前戦のペルー戦同様、守備的MF(ボランチ)風にプレイしてしまった。センターハーフ的ではなかった。つまり、ポジションが低すぎた。

FW李5.5 最近1試合1試合、キープ力が高まっている様子。懐も深くなっている。伸びている選手と見た。

FW岡崎5 存在感を発揮できず。群れの中に埋もれていた。ボールを止められていない感じ。暴れている感じ、収まりが悪い感じ。

FW本田5 「2トップ下」の選手に見える時間は60分を超えていた。ザッケローニの指示によるものらしいが、そのポジション移動が、チームにプラス効果を与えているようにはまるで見えなかった。少なくともこれまでの中で最も好感度の低いプレイをした。

※交替選手
DF槙野5.5 フィード力をどこまで高められるか。プレイ時に身体の向きがハッキリ現れやすいタイプ。右足でのプレイが多い彼に、左が適任には見えない。

MF家長6 独特のボールタッチでチームに意外なリズムをもたらした。遠藤より僅かながら高い位置でプレイしていたこともプラス材料。

FW関口―(採点なし)プレイ時間が短すぎたため。

※監督ザッケローニ4.5 試合後の記者会見における自己評価、自己分析が甘すぎる。シュート11本は、決して胸の張れる数ではない。試合内容もイマイチ。3―4―3も本腰を据えてトライしている気がしない。「短い時間の中で良くここまでできた」と言うが、変えた意味が伝わってこない。「オプションにしたい」とも述べているが、いつどういう時に使いたいのか、つまり4―2―3―1との違いは、浮き彫りになっていない。採用動機が具体的な形として少しも見えない。なぜ3―4―3を採用するのか。ザッケローニが考える3―4―3とは何なのか。4―2―3―1との違いは何なのか。分かりにくさは膨らんでいる。

試合のレベル5(10段階)
娯楽度4.5(10段階)

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