先制点はドリブルでゴール付近に持ち込んだ勝又がディミッチにパス。これを受けたディミッチは、ペナルティボックスのなかで落ち着いてボールを処理。ワンタッチではなくツータッチでしっかりと前へ出す。パス&ゴーで動いていた勝又がこのボールを受け取り、右足でシュートを決めた。
琉球のディフェンスはよくなかった。いくらゾーンで守っているとは言っても、ディミッチがゆっくりコントロールする余裕を与えるほど守備網を弱くしていいわけがない。
もちろん町田のアイデアと動きがよすぎて対応できなかったということもあるだろう。しかし琉球がセットプレーで同点に追いついたあとの26分に勝又が決めた勝ち越し点は、ペナルティボックス内に多くの人数が入り込み混戦となった瞬間に生まれた。人数が多すぎ、ボックスの外で守るときとは異なって、琉球のディフェンダーが状況を処理しきれなくなったのではないだろうか? "想定外"の状況になると対処法が見当たらないのか。
■琉球はまだまだ発展途上
町田は後半も得点を重ね、5-1で勝利したが、5点も取っていても、勝負自体は前半の2得点で決まっていた。
フラットラインの4-4-2でゾーンディフェンスというコンセプトそのものはひとつの手法であって、それ自体の是非を問う必要はない。しかし運用する琉球の集中力または戦術眼はまだ発展途上なのだろうとは思う。
約束事でゾーンを分担するあまりか、ボールホルダーを誰も見ていない、まったく寄せにいかない、あるいは止まったまま傍観者になっているという場面が多かった。攻撃で言えば左サイドバックの佐藤将也が、上がった挙句に弾かれることが確実なクロスを無造作に蹴っていた。何もやることがないのなら下げてつくり直すなど、思考停止せずにもっといいアイデアを考えてもいいのではないか。
町田のランコ・ポポヴィッチ監督は試合後の会見で「ウチのチームでは頭のよくない選手はプレーできません」と言っていたが、そこは同意する。町田の選手はどうしたら相手の隙を衝けるかをよく考えてプレーしていた。しかし琉球はフィジカルもテクニックもあるのに、町田の攻撃にどう対応していいかわからないままだった。それが選手個人の問題なのか、チームとしての取り組みの問題なのかはわからないが、ポポヴィッチ監督の言う「頭」の差が出てしまったように見受けられる。
才能の持ち腐れとでも言おうか。先手をとって攻撃をし、そのアイデアがうまくはまれば大量得点も可能なメンバーなのかもしれないが、受けにまわると非常に弱い。
それでも、対応の仕方がわからないままでも、守備の仕方を変えなかったのはよいことなのかもしれない。目先の結果にこだわるなら2-1で負けている段階でブロックを形成し、大きい選手を上げてパワープレーに徹すれば引き分けに持ち込めたかもしれないが、シーズンをつうじてゾーンを徹底していこうという長期的な視野があるのなら、この大敗も良薬になる。
■対策を練られたとき、町田はどう打開していくのか
試合後の会見では、琉球の新里裕之監督は「自分たちの問題」だと強調して町田のサッカーを称えることを避けた。いっぽう町田のポポヴィッチ監督はやはり「自分たちのサッカーがすばらしかった」と強調して琉球のサッカーが拙いと暴露するのを避けた。
どちらもバイアスがかかっている。たしかに琉球は攻守ともによくなかったが、それは町田のよさによって崩された結果でもある。その逆に、町田がよかったのは、琉球がよくなかったからでもある。
ともかく、町田のサッカーがJFL随一で、J1やJ2にもなかなかないものであることはよくわかった。琉球のようにゾーンを意識して守るとその間に入り込まれて自由に動かれてしまう。対戦する相手は町田の選手がプレーできないよう、スペースを消していかなければならない。