4月13日、菅直人首相と松本健一内閣官房参与との会談内容が問題化し、官邸はその火消しに大わらわとなった。

 首相に面会した後、松本氏は、首相が福島第一原発の「周囲30キロ、場合によっては30キロ以上のところも、10年、20年住めないことになる。再び住み続けるのは不可能だ」と語ったと記者団に話した。

 ところが、菅首相は夕方に「私が言ったわけではありません」と松本発言を否定。その松本氏も「地元の人々が住めないと考えているだろうという私の推測だった」と発言を撤回した。また、松本氏は、首相の発言が報道されたのを受け、首相から訂正するよう求められたことを明らかにした。(14日朝日新聞)

 首相発言が事実であるとしたら、被災者や避難者には耐えがたいこと、許せないことだ。

 1日も早く住み慣れた地域、住み慣れた家に帰ることを願い、そうなることを信じて辛い避難生活を送っている。言わば、元の生活に返る決意が現在の生活に耐える力を生み出している。首相が「帰れない」と明言すれば、今を耐える力も消え失せてしまう。

“計画避難”を指示された飯舘村の菅野典雄村長が村民を前に、「何と心ないことを言うのか」と首相への怒りをぶちまけたのも無理はない。

 大半の人はこの報道に接してこう思うだろう。

 おそらく首相発言は事実だろう。それを松本氏が明らかにして問題化したので、否定せざるを得なくなった。「私が言ったわけではありません」という首相の発言は、首相が松本氏の言ったことにしようとしている。松本氏に責任を押しつけるものだ。

 松本氏も「首相から訂正するよう求められた」と言うことは余計なこと。首相から言われなければ訂正もしなかったことになる。

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