原(強化委員長)サンは、このザッケローニの采配をどう見ただろうか。攻撃サッカーを標榜する指導者の中で、彼は監督探しをしてきたはずだ。僕が原サンなら裏切られた思いでいっぱいだろう。

ザッケローニにはもはや笑いは一切ない。その表情及びコメントには、余裕を感じることはできないのだ。絶対負けられない戦いの渦中に放り込まれたような、まさにいっぱいいっぱいの状態に見える。絶対に優勝しろ! と、国民から強くせがまれているわけでもないのに、だ。

メンバー交替にもそれは端的に表れている。選択肢はないに等しい。先発メンバーで押し通すのみ。オプションはない。絶対に負けられない戦いをしてきたことで、選択肢を自ずと狭めてしまったわけだ。

言い訳も目立っている。コンディションの悪さ、準備の悪さ、メンバーの若さを必要以上に、アピールしている。「W杯予選を見据えて若いチームを連れてきている」と言うが、このチームのどこが若いのか。欠けているのは、ほぼ闘莉王一人。

試合内容の分析も独善的だ。彼は、韓国のサッカーについて、一応賞賛したものの、日本が押し込まれた原因は、フィジカルとロングボールだと語っている。さらに「日本はどこよりも良いサッカーをしている」とも語っているが、少なくとも僕にはまるでそう見えない。本田頼みのサッカーと言うべきなのだ。残念ながら、監督の力を感じることはできない。

就任直後に行われたアルゼンチン戦は素晴らしかった。続く韓国戦も上々だった。さすがザッケローニと、僕はその時、素直に感心した。試合内容を採点すれば「7点」は有に超えていた。だが、これまで戦ったアジアカップの5試合の中で、「6点」を付けられる試合は一つもない。韓国戦の前半だけに限れば「6.5点」を出せるが、後半以降は尻すぼみ。準々決勝で120分を戦い、さらに日程的に不利な中2日の戦いを強いられた韓国に対して、である。韓国選手の動きには、明らかにキレが感じられなかった。

にもかかわらずザッケローニは「韓国の疲労に期待したが、彼らはいつも通りの動きで予想が外れた」と、語っている。

大袈裟に言えば、大会中の全てのコメントに、僕は違和感を覚えるのだ。日本代表は、明らかに良くない方向に進んでいる。韓国戦は本田と主審の笛に助けられた一戦。決勝進出を、素直に喜ぶ気にはなれないのである。