二人のセンターバックとダブルボランチが作る四角形の中央でパスを受け、そのままターンしてドリブルで持ち込む。後方からのチャージに負けず、スピードを落とさずにペナルティエリア内へ切り込んでいったことで、イランはフィジカル的なアドバンテージを発揮できなかった。

加速力のあるドリブルはもちろん、パスを引き出すポジショニングが絶妙だ。両センターバックとダブルボランチの中央──4人の誰からも一番遠いところでパスを受けることによって、ターン、ドリブル、シュートという一連の動作へつなぐことができている。台風の目に穏やかな風が吹くように、相手の守備ブロックのなかにもボールを引き出せるエリアがある。スペインが南アフリカ・ワールドカップで見せた崩しの方法論だ。

ＵＡＥとの決勝戦では、ダブルボランチの一角を担う山口螢の献身さが目を引いた。自陣と敵陣でそれぞれ29回のボールタッチを記録し、合計58回は出場選手最多である。ラストパスやフィニッシュへの絡みは少なかったものの、マン・オブ・ザ・マッチと言ってもいい働きを示した。

香川、金崎夢生、原口元気、宇佐美貴史らが注目を集めてきたロンドン五輪世代は、アジア大会を経てチーム内の競争が加速していく気配である。金メダルを持ち帰ったことで、今後はひとつ上のレベルでポジション争いが繰り広げられていくだろう。それこそが、今大会で得た何よりの収穫である。

参考)ＵＡＥ戦のボールタッチ数
1)山口 58回(自陣29回、敵陣29回)
2)山村 50回(34回、16回)
3)東 48回(11回、37回)
4)薗田 47回(47回、0回)
5)比嘉 46回(30回、16回)
6)水沼 45回(22回、23回)
7)永井 44回(2回、42回)
8)山崎 43回(13回、30回)
9)實藤 42回(33回、9回)
10)鈴木32回(31回、1回)

※先発のフィールドプレーヤーのみ。キックオフ、フリーキック、コーナーキックなどはボールタッチ数に含まない。

・結果優先は正しい
・ここから応用力が試される
・U-21代表に求められるレベル
・あと一歩足りなかった本田の決定機
・松井大輔のハイレベルな駆け引き

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