そのあたりの体質を、巧みに利用していたのが川淵現名誉会長だった。ジーコジャパンが、ドイツW杯であえなくグループリーグ落ちすると、帰国直後に成田空港で行われた記者会見で、オシムの名前をポロッと出した一件などは、それを象徴する良い例だ。新監督の名前を出すサービス精神を発揮することで、自らに降りかかりそうな批判を、見事にかわすことに成功した。メディアは反省や検証を忘れ、一斉にターゲットをオシムに向けた。見事に操られてしまったわけだ。

氏が会長に就任した02年以降、協会批判は驚くほど減った。

新会長の小倉さんは、少なくとも僕が知る限りかなりリベラルな人だ。当たりもソフトだし、権力志向も低い。川淵さん的でもなければ、Jリーグの秋春制を強く打ち出したり、ベストメンバーを強要したり、バックパス禁止などと叫んだ犬飼さんのようなタイプでもない。名誉職に近い、かつての会長がそうだったように、一歩引いた立場で泰然自若と構えるタイプだと思う。

そうした意味では、結果オーライのような気もするが、サッカー協会が、スポーツ界をリードするような競技団体になるためには、メディアの力も不可欠なのだ。小倉新会長の下での変化に、僕は大いに期待したい。

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