[画像] インタビュー:immi「エレクトロニックな音でありながら、すごく人間的」

 2008年夏にインディーズで発売したファーストアルバム「Switch」が、先行配信したiTunesダンスチャートで1位を記録。2009年7月にシングル「WONDER EP」でメジャーデビューを果たしたシンガーソングライター、immi(イミー)。今年5月には、フジテレビ“ノイタミナ”で放送されたアニメ「さらい屋五葉」のオープニングテーマ曲に起用されたシングル「Sign of Love」を発売。6月16日には、待望のセカンドアルバム「Spiral」を発売した。

――2008年9月にインディーズでファーストアルバム「Switch」を出されてから2年弱ぐらい空いていますが、「Switch」を踏まえて今回のアルバム「Spiral」を作るに際し、事前にイメージしていたことはありましたか?

immi:特に無いというか(笑)。1曲1曲は「こういう曲」というものを集めていったんですけど。ハッキリ言うと、最初にコンセプトを決めたというより、出来上がってみて「このアルバムって、こういうものだったよね」というものが見えてきたという方が多くて。今振り返ると「今回はこうしよう」とか「じゃあ、次はこうしよう」という経過のアルバムというより、「もういつ死んでも、これで満足できるぞ」というぐらいの(笑)、今しか出来ないものを全部やり切るつもりで作った感じが強いですね。

――アルバムの制作作業を始めたのはいつ頃ですか?

immi:「Alice」というEPを出したすぐ後、9月ぐらいですかね。

――1番最初に作った曲はどれですか?

immi:一番古い曲は「Swimmer」という、インディーズの時からあった曲で。ライブではやったりしていたんですけど、なかなかシングルに入れるタイミングが無くて。今回初めてアルバムに入りました。

――逆に、最近作った曲は?

immi:最初にシングルを出す時に「FIGHT BACK」と「Sign of Love」と「circle - square - triangle」と「sora to i」の4曲が先に出来上がっていて。それプラス元々あった「Swimmer」とか、今までのシングル曲があって。その他の曲が、最後に出来た曲ですね。でも結構、同時進行で作っていった曲が多くて、ワンコーラスずつバァーッといっぱいあって。全部出来上がった所でアルバムの全体像がなんとなく見えて。それぞれ仕上げていく形でしたね。

――このアルバム収録曲以外に、選曲に漏れた曲はありましたか?

immi:4曲ぐらいは。それだけ、溜めている曲が無いのかもしれないけど(笑)。全部出来上がってというよりも、途中の段階で「まぁ、これは置いとくか」みたいな感じで置いておいて、もう忘れ去られてる曲が多いから(笑)。曲数は、あまり沢山書くタイプではないですね。

――なぜ、アルバムタイトルを「Spiral」に?

immi:結構、色んな意味を含んでいるんですけど、1曲目を「Secret Place」という曲にしたのも関係していて。森の中に入っていく「自然」をモチーフにしている曲なんだけど、音は全てデジタルで作っているギャップ感が、アルバム全体にもあると思っていて。元々リアルな人間模様というか心情を書くのが好きなんですけど、歌詞が精神的な内容を書いていることが多いので。エレクトロニックな音でありながら、すごく人間的なことを表したいという意味で、人間といえばDNAという所に結びつき、形が「Spiral」でもあるし。歌詞を書いていく上で、すごく混沌としている様子が、すぐに答えに結びつくんじゃなくて、ぐるぐると回っている、上昇していくイメージもimmiっぽいよね、という話もあったので(笑)。あと一つはこじつけなんですけど、アルバムの中に5曲“S”から始まる曲があるんですよ。そう言えば前のアルバム「Switch」も“S”から始まるという所から(笑)。

――それを言ったら、次のアルバムも…。

immi:もう次も“S”じゃないといけなくなる。“S”から探すみたいな(笑)。

――ぐるぐると回っている所がimmiさんっぽいというのは、例えばどんな所ですか?

immi:答えが出ずにずっと黙り続けることとか、家でも考えごとだけで何時間も過ごしたり(笑)。

――曲順はスムーズに決まりましたか?

immi:そうですね。客観的に聴きながら考えたんですけど、すっと決まりましたね。何を最初に持っていきたいか決まっていたので。最初の1、2、3曲って、自分が他のアルバムを聴く時も大事だから。

――「森の中に入っていく」という1曲目の「Secret Place」や、世界が広がるような3曲目の「Sign of Love」はオープニングに相応しいなと思ったんですけど、2曲目が「FIGHT BACK」だったのは少々意外でした。

immi:そうですか(笑)。それが最初から決まっていた所で。曲順によって初めて聴いた人が「immiってどういう感じなんだろう?」と決定する所だから、自分の聴いて欲しい所を最初の方に持ってきた感じですね。

――「何が普通かAbnormality?」と歌詞にあるように、世の中の価値観に対して違和感を感じるようなことはありますか?

immi:チョコチョコ感じる。この時代だからこそ色んな価値観の人が表に出てくるようになった感じもするし、基本みんな自分の考えが普通だと思っているじゃないですか。そこを覆された時に、色んな考え方もあるし、自分も影響されて考え方が変わることもあるし。

――少数派が多数派に抑圧される場面もありますが、自分はどちらに属することが多いと感じますか?

immi:選ぶ題材によって考え方が違うんですけど、 今までは大多数の方にいたと思っていたんだけど。どちらかを選ぶ時に、大多数に流されないように、自分を意識していたい。自分はそんなに強烈な人間じゃないと思うんですけどね(笑)。

――初対面の人に、事前に抱いていたイメージとのギャップを感じられることはありますか?

immi:大体そうです(笑)。「意外とフワッとしてるね」と言われます。大多数の意見ですけど(笑)。

――話している感じだけだと、森ガール的かも(笑)。

immi:ちょっと困りますね(笑)。パワーを内に秘めている、と思ってもらえれば。

――4曲目の「Swimmer」は映像が頭に浮かぶような歌詞ですが、immiさん自身は泳いだりするんですか?

immi:今は行ってないんですけど、その頃ちょうどジムに行って泳いでいたから、ネタにした感じですね(笑)。多分、泳いでいなかった時だったら全然思いつかなかったと思うんですけど。

――5曲目の「Jeezy Peezy」は、前作の「Go with the flow」でもShigeoさんがフィーチャリング参加されたThe SAMOSとの共作ですが、作業はどのように進められたんですか?

immi:最初にプロデューサーのJETBIKINIとデモを作って、歌とトラックのデータを渡して。それからThe SAMOSがアレンジを加えて、Shigeo君の歌とかも乗って返してもらって。

――てっきり一緒に歌入れしたのかと思ってましたが、違うんですね。では、歌詞も後から追加された部分があるんですか?

immi:そうですね。最初渡したのはワンコーラス分とか「Jeezy Peezy」と言っているフレーズの部分だったりして。The SAMOSから返って来てからも、他に色々付け足したりしていってます。Shigeo君が歌っているパートに、私も勝手に?被せたり(笑)。

――何かリクエストされたことはありましたか?

immi:「Switch」でコラボした時はRAPっぽいものが多かったので、Shigeo君のメロウなメロディーも乗せて欲しいというリクエストをして。曲の最後に、すごく大展開する感じで付け足していってくれた話を後から聞きました。

――6曲目の「Step Up!」のように、過去の恋を引きずるイメージをimmiさんに対して持ってなかったんですけど、この歌詞は等身大の自分というよりは、想像を膨らますような感じで書くんですか?

immi:そうですね。「Step Up!」とか「Go Around」って、女子からの視点という感じを意識して書いたのもあって。男の人がロマンチックであるように、女の子も妄想的になっちゃう所もあったりして。ちょっと悲劇的な感じだったり、それを楽しんでいたり。等身大というより、一歩引いて作っている感じもあって。トラックがすごくポップだったので、逆に“失恋”という内容にしようと思って。

――男は別名保存で、女は上書きするとも言いますが、自分自身に置き換えると引きずるタイプですか?

immi:普通どれぐらいが引きずるのか分からないけど、私はもう次に誰かがいれば、すぐ忘れちゃうタイプだなぁー(笑)。

――8曲目の「Rainbow」はタイトルから想像するイメージや、先程の「Step Up!」と比べてもダークな曲調ですが、歌詞を書くのは精神状態がいい時か、もしくは内にこもっているような時の方が書けたりしますか?

immi:精神状態は良い方がいいですね。歌詞と向き合う時は何かしら前向きになっていないと、ダークな最中だったりすると書けないし。そこから抜け出した時に書けるという。

――ダークな時に気持ちを切り替える方法は持っていますか?

immi:歌詞を書いて、ちゃんとダークな最中から抜け出せるのかもしれない(笑)。完全に一番下にいる時は書けないけど、そこからゆっくり上昇している時に歌詞を書いて、抜け出せるみたいな。私は結構、気分転換が苦手なので、遊んだりして発散できるタイプではないですね。逆に遊んでいる途中に落ちる方が強いかも(笑)。

――ちなみに、雨は好きですか?

immi:嫌いですね(笑)。でも、雨の日に部屋で電気がついている感じは違和感あって、好きかもしれない。雨の日って外が暗いから、余計に部屋が明るい感じもするから。学校を思い出しますね。学校って窓がすぐ横にあるから、外は暗いんだけど、教室は明るくてガヤガヤうるさいみたいな、そういう懐かしさを感じなくもない(笑)。

――家では、何をしていることが多いですか?

immi:パソコンと向き合ってます(笑)。制作も多いし、最近はネットでファッションサイトとか、フォトグラファーのサイトを見たりするのも好きで、そこで色んなものを集めたり、あっという間に時間が経っていたりするんですけど。最近は外に移動して、何か作ったり打ち合わせしたりが多いので、家でずっと過ごすというのがあまり無かったんですけど、裁縫的なことをチョコチョコしているとかが多いですね(笑)。

――結構、文化系なんですかね?

immi:(笑)。かといって別に、何かにすごく没頭したり、オタクではないんですね。例えばカメラも好きだけど、カメラの本を沢山読んで知識をつけるとかは全然、苦手で。感覚的に出来ることしかやらない方が多いかも。

――10曲目の「Black or White」では、「I hate the GRAY zone…」と歌詞にありますが、どちらかと言えば白黒ハッキリつけたいタイプですか?

immi:自然にしてるとGRAY zoneにいることが多いと思うんですけど、どこかで白黒つけないといけないことは多くて。私は多分、曖昧にしていることが多いから。

――ブックレットでは、モノトーンをベースに鮮やかな赤い衣装が印象的ですが、好きな色はありますか?

immi:難しいですね、色々あるんですけど「この色」というよりも、組み合わせが好きだから。例えば、黄色と紫とか、ピンクとオレンジの組み合わせが好きとか。今回アルバムのカラーは、赤がテーマだったんです。だから、赤を色んな所でプッシュしてます(笑)。例えば服でもそうだし、ライブをするにも多分また今度赤にすると思うし。

――ひょっとして、美大出てます? 写真とか裁縫とか音楽以外にもモノ作りが好きそうなので、そんな気が(笑)。

immi:美大出てます(笑)。だからかな?

――11曲目の「No.1 GIRL」は、サウンドでもショーガール的なムードが漂っていますが、immiさんにとって理想とする女性像はありますか?

immi:基本、絵を描く時も女の人を書くことが結構多いので、容姿的に女像がすごく好きなんですけど。単純に男性から見るエロさじゃないんだけど、女性から見たセクシーさがある人は好きです。多分、内面から出る魅力だと思うんですけど、その魅力も人それぞれだから、どこで感じるかは分からないけど…(笑)。

――エレクトロなサウンドからクールなイメージを持たれているような気もしますが、「Step Up!」ではキュートな女子で、「No.1 GIRL」では色気漂うセクシーさを放っていたり、アルバム全体を通して曲によって声の印象が変わるのが面白かったです。

immi:「No.1 GIRL」は、ムーランルージュみたいなイメージが最初にあって、男の人を誘うようなセクシーな女の人というイメージで書いたので。だけど、そういう人であっても一人の男性から選ばれたいという心情を書いたつもりで。それぞれの曲にキャラクターを込めてやった部分もありますね。

――12曲目の「Go Around」では待ち合わせの場面が描かれていますが、immiさんは相手と自分の温度は50:50を求めるのか、自分よりも相手の方に追いかけて欲しいとかありますか? 必ず自分が先に着いて相手を待っている時間を楽しむ人も中にはいますが、長時間でも待てますか?

immi:結構、場合による感じで。多分、気持ち的にすごく前向きな時はどれだけでも待てるんだけど、「Go Around」の女の子はタイミングが良くなかったのもあるので。温度差は一緒の方がいいですね。

――9曲目の「sora to i」と、13曲目の「circle – spuare - triangle」は個人的にも特に好きな曲なんですけど、シングルに選ばれなかった理由は?

immi:そんなに省かれたという感じは全くなくて、曲としてはそれぞれ同じぐらいいい曲だと思っているんですけど(笑)。

――白と黒のビジュアルだったり、「Sign of Love」と「FIGHT BACK」のように対象的な2曲ではなかったのかもしれませんね。

immi:そうですね。そういう意味でも、上手く2つが立っている曲を選んだのもありますね。その4曲を作った後もアルバム曲をどんどん作っていったんですけど、「シングルだからこういう感じ、アルバムだからこういう感じ」とか、軽さとか重さを考えずに。1曲1曲が一つの作品として完結するイメージで、アルバムに入れる前提というもの。そういう意識で作っていったのもありますからね。

――「circle - spuare - triangle」は俯瞰で地球の自然を眺めているような視点を感じますが、immiさん自身は山や川など自然に触れる時間や、動物園や水族館に行ったりはしますか?

immi:この間も映像を撮るのに、砧公園に行ってきたんですよ。最近、動物園には行ってないですけど、好きですね。うちの猫だけで十分癒されているので(笑)。

――ジャケットにクーズーが登場していますが、Wikipediaによると日本の動物園にはいないと書かれてましたね。

immi:「どういう動物がいるかな?」と思って上野の博物館に行って、色んな動物の剥製を見てきたんですよ。それで探したら、たまたまクーズーがいて。角がスパイラルしていて、それだけフィットする動物が出て来たので、そこから選んだんです(笑)。「日本にいないだろうなぁ」と思いながら半分諦めていたんですけど、奇跡的に見つかりました。動物を使いたいと思ってはいて、どこまでジャケットの中で採り入れるかは色々考えつつだったんですけど。

――これって、首から下はどの辺まであるんですか?

immi:首から下が無いんですよー。ギリギリ映せる所までなんです。だから実は、首をまたいだ感じになっているんです(笑)。

――7月20日の「Spiral」リリースパーティは、どんな内容になりますか?

immi:今回初めて完全バンド主体でやろうと思っていて、ドラムとシンセとベースを中心にやるんです。アルバムとは全く違うアレンジでやろうと思っているので、その日だけのスペシャルなライブになるかなと。途中、ダンサーと映像だけで1曲やったりして。

――何かグッズは作りますか?

immi:初めてグッズを作ります(笑)。YATTという2人組がいて、その1人がデザイナーをやっていて。「Alice」のEPをデザインしてくれたYOSHIRO君がデザインしてくれたTシャツを売ることになって。あと、NOOKAという時計があって、以前からすごく仲良くさせてもらっていて。NOOKAに展示をしてもらいつつ、コラボウォッチを出させてもらおうと思っていて。あと、iPhoneカバーも作ります(笑)。

――やる側の立場を考えると大変な気がしますが、観る側としては非常に楽しみにしてますね。

immi:ありがとうございます!

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