Appleが先月発表したiPadは携帯電話とネットブックの間を埋める製品だ。常用できるWEB端末や電子ブック端末など様々な用途として利用できることから大きな期待が寄せられている。Appleの新製品はここのところ毎年夏前に発売されるiPhoneに大きな注目が集まっているが、iPadもまたiPhoneと同様に広いターゲット層に話題を提供する製品となりそうである。

このiPadは通信機能を内蔵しており、Wi-Fi搭載の製品は3月に、3G(W-CDMA)を搭載した製品は6月に発売される予定とのことだ。この3G対応版iPadは携帯電話ネットワークがあればどこでもネット利用できることから、iPhoneのように「24時間インターネットアクセス」することが可能である。Wi-Fi版より価格は高くなるものの、モビリティーを考えれば3G対応版のiPadを買うほうがお勧めだ。

だが、各国で通信事業者と携帯電話回線の契約セット販売が行われているiPhoneと違い、iPadはAppleが単体で販売することを予定している。 iPhoneのように端末にSIMロックをかけて無料や数千円といった割安販売を行い、通信事業者とは1年や2年といった固定契約を結ぶ、というこれまでの販売方法とは異なる販売方法が採られるようである。

これはiPadは携帯電話ではなくモバイルインターネットデバイスや電子ブックに近い製品であり、携帯電話事業者があえて販売する製品ではないからだろう。もちろん事業者によっては取り扱いを行うところもあるだろうが、Appleのスタンスとしては「単体売り、SIMロックなし」となるようだ。

AppleはiPhoneでは頑なに「通信事業者を通して販売する」ことに拘っていたが、それはiPhoneが携帯電話であり携帯電話事業者との契約が必須の製品だったからだ。一方iPadは携帯電話を内蔵しないWi-Fi版もあることから、3G版を使いたい場合は自分の好みの通信事業者を使って欲しい、という考えなのだろう。

この販売スタイルはヨーロッパやアジアでは一般的であり、これらの国では、携帯電話にSIMロックがかかっている「事業者専用・安価販売品」とSIMロックの無い「自分の好みの事業者が利用できる定価販売品」の2種類の携帯電話が販売されている。

アジアでは後者の販売方式が多く、携帯電話と通信事業者のSIMカードは自由に組み合わせて利用するもの、という考え方が消費者の間で常識になっている。一方アメリカではこれまで携帯電話内蔵デバイスは通信事業者が販売することが通例である。もちろんSIMロックをかけての販売である。

iPadの発表後、ヨーロッパやアジアではiPadに自分の利用している通信事業者のSIMカードを入れて利用すればよい、と大半の消費者は素直に考えているようで、「自分の利用している通信事業者から発売されるのだろうか」といった不安を持つことも無い。SIMロックがないため価格は割高になるかもしれないが、それは携帯電話として価格を比較した場合だろう。ネットブックなどと比較すれば極端に高いというわけではないからだ。

なによりもSIMロックが無く通信事業者と固定契約を結ぶ必要がないのだから、海外ではプリペイドのデータ通信SIMカードを使い、ネットアクセスはWi-Fiと兼用して毎月の通信費を割安に抑えることもできる使い方が利用できるメリットもある。

ちなみにiPadを通信事業者から無料で購入できたとしても、SIMロックがある場合はデータ定額プラン加入が必須となるため、毎月のランニングコストを低くすることは難しい。SIMロックありの割引価格と、SIMロックなしの定価販売価格を比較する場合には、月々のランニングコストを含めた金額を比較しないと消費者のメリットを見誤ることもあるわけだ。

このようにiPadはSIMロックの無い製品としてAppleが販売することから、SIMロック・事業者専用端末販売が常識の日本では販売までに紆余曲折する可能性も考えられる。iPadの発表後、すぐにNTTドコモから「対応を検討したい」と発表がされたが、対応の早さに驚かれた人も多いだろう。