連続テレビ小説「ちゅらさん」や、「ココリコミラクルタイプ」(フジテレビ)、第3のビール「ぐびなま」のCMなどで人気を集めた女優・小西真奈美。モデル出身のスレンダーなスタイル、愛らしい笑顔と共に、つかこうへいや野田秀樹といった演劇人に支持される確かな演技力を持ち、数々の作品に出演している。今回、2006年公開の「UDON」以来3年ぶりの主演作となる「のんちゃんのり弁」で、初の母親役にチャレンジ、新たな魅力を開拓した。「30代という今の年齢が好き」と話す小西の演技感、素顔に迫る。

――今回初めて母親役に挑戦されたとのことですが、実際に演じてみていかがでしたか?

小西真奈美:(以下、小西)母親役というのはもちろん頭にありましたが、あくまで1人の女性が、頑張って社会に出て行くというテーマを持った作品だと感じていて。だから、“お母さんらしさ”を強く意識するよりは、1人の人間が成長して、最終的に自立する、その姿を演じきりたいなと思いました。

――役にはスムーズに入り込めた?

小西:はい。すごく共感する部分も多かったので。まず、彼女の性格と似ているのは、物事をなんでもポジティブに考える所と、思ったことをすぐに行動にうつす所。あと、小巻の性格がとても好きです。最初はお金も仕事も無くて、お母さんに甘えている人なんですけど、とりあえずなんでも良いから、生活の糧を見つけようって姿勢じゃなくて、本当に自分のやりたいことを見つけようとしている部分が素敵ですよね。しかも、幼稚園児の娘に「なぜこの仕事を選んだのか」とちゃんと説明するじゃないですか。相手が子供だからって誤魔化そうとしない、真っ直ぐな人間だなって。

――原作のコミックの時代設定は今よりも10年ほど前ですね。監督はその時代の30代と、現代の30代では“重み”や意味が違ってくるので、現代に設定し直して脚本を書いたそうです。小西さん自身は、子供の頃思い描いていた30代と、今実際に自分が30代になってギャップを感じることはありますか?

小西:もう全然違いますね。子供の頃の30代っていったらかなり大人で、酸いも甘いも経て、ちょっとのことには動じず、ドンと受け止める人をイメージしていたんですけど。実際に自分が30代になってみると、ちょっとのことですぐ悩むし。そのくらい、今は女性の選択肢が広がってきたっていう事かもしれないですね。でも、私は今の年齢がすごく好きです。

――ご主人役の岡田義徳さんとの喧嘩シーンは壮絶でしたね。

小西:あの喧嘩のシーンは、怪我しちゃいけないし、物が壊れるからそんなにシーンを何度も撮りなおせないって、頭の中では分かっていても、いざ本番になるとつい本気に…。岡田さんも必死だし、私なんて“軽く殴る”という箇所が“猫パンチ”になっちゃっているし(笑)。でも、その必死さ加減があの2人だし、くだらなくて涙が出ちゃうほど愛しいんですよね。

――岡田さんは作中で、仕事もきちんとしない“ダメ亭主”を演じていますが、そういう頼りない男性に現実に出会ったらどう思いますか?

小西:確かに、本当ダメダメな亭主なんですけど、なんか憎めないっていうか、愛情だけはすごく深い人だと思うんですよ。一緒に生活しながら、改善できなかった小巻にも責任もあるし、小説家になる夢をあきらめずに追い続けて働かないのは、ある意味自分に正直で素敵だなって。