■以前まだ、新宿にリキッドルームがあった頃によくライブを観させてもらっていましたが、前回のツアーファイナルの新木場スタジオコーストは、ワンマンだと今までで一番大きい2,800人ぐらいが入る会場で、しかもそれがソールドアウトして。そういう状況をどのように感じていますか?

中野:コツコツ頑張ってきましたからね。いい時も悪い時もあるし、別に全然それで満足しているわけでもないし。ライブの良し悪しは、お客さんの数だけでが決まるわけでは全くないだろうし、一つの目安でしかないですから。これからもっとやりたいこともありますし。

■宣伝文句として「オリコン8位」と書かれたりもしてますけど、それも同じで。

中野:売れたからいい音楽とか、売れないからダメな音楽とかないですし。すごく偉いライターさんが「いい」と書いたから、評価が高い作品というわけでもないですし。音楽でそういう基準なんて、あって無いようなものだから。ただ、やっぱり聴いてくれた人がどういう形で受け止めてくれたかは気になります。音楽って、ご飯と違って無くても生きていけるものだけど、あることで人生が潤ったり、元気になったり、あるいは悲しみを共有したり、そういうものだから。買った人がいいように利用してもらえたら、作り手としてそれが本望だから。

■人生の娯楽という意味では、エンターテイナーのような感覚も持ち合わせているのでしょうか?

中野:エンターテイナー、エンターテイメントと言うと、もうちょっと分かりやすいものになっちゃうから。映画だったらいっぱい爆発したり、ハリウッド的なお金の掛け方をしたモノを、一般的には指しやすいじゃないですか。だけど、そうではない美しい映画も様々なものがあって。今日はドッカンドッカン爆発する映画を観たいけど、そんな気分じゃない時もあったり。色んな場面で色んな機能を持つ音楽があるから、その中で自分が作っている音楽が聴いている人の人生の中で、重要な時間になってくれれば。ただ、刺激的な映像がバンバン目に飛び込んでくるようなものよりは、もうちょっと深くその人の人生に関わって、何かプラスの方向に物事が動いていくような音楽を作りたくて、ずっとやっていますね。

■5年位前と比べると、お客さんのノリも、ダイブとかモッシュとかではなかったですよね。

中野:もっとクラブのお客さんですね。客層はだいぶ変わりました。

■あんな風に踊れるような音楽だったかな?と感じながら観ていました。

中野:5年位前は、踊れる音楽ではなかったですね。でも俺達も音楽性が少しずつ変わってきたり、アルバムごとに打ち出すものも違ったりするし、そこで食い付いてくる人達というのも違うから、それは変化しますよ。

■単純に、客席とステージの距離感が近くなった印象を受けました。

中野:昔の方がナーバスだったから。自分がどういう風な人間として見られているのかとか、表現者としてちゃんと伝わってるかとか、メチャクチャ神経質だったと思いますし。今は音楽的にもそういうのあまりなくなったから、ライブの佇まいとかちょっと間口が広がっているんじゃないかと思っています。

■今年はフジロックのホワイトステージでヘッドライナーを務めますが、フェスでの楽しみはまた違った所にある感じでしょうか?

中野:フェスティバルは自分達のお客さんだけじゃないから、そこでどういうリアクションを引き出せるかは、ゲームみたいなものだから。ワンマンで盛り上がっているというのは、ある程度は当たり前のことで、それ以上の何かを起こさないと。フェスティバルは自分達を観に来たお客さんではない、単純にオーディエンスという多く集まった人達を、その時間だけでどれだけコミュニケーションを成立させられるか、というゲームだから。俺達はそれを外国でもやっていますから。

■ゲームの勝ち負けじゃないですけど、ライブの良し悪しはどういう風に判断するんですか?

中野:もちろん自分達の出来の良し悪しだけで判断するものでもないから。お客さんと、どうだったかですよね。盛り上がったかもそうですし、色々と。

■ライブではベースを弾かれたりもしていますが、STEINBERGERを選んだ理由は?

中野:俺の体が小さいから(笑)。ネックが細くて、ギターみたいに弾けるんですよ。ボディも小さいからブン回せるし。高校生の時から使ってるんですよ。

■いわゆるベースプレーヤー的な感覚はあるんですか?

中野:あまり無いですね、俺はプロデューサーだから。スタジオに居たらギターもキーボードも弾くし、コンピュータもずっとイジってるし、ドラムにマイクを立てたり、全部のことを自分でやるから。ベースを弾いてる時間なんて、本当にその内の1/50ぐらいですから。